108 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 06:25:09.58 ID:LEDq7wKmO
( ><)「いたいんです……あたま……ぁぁぁ」

ぎりぎりと骨の歪む音が、体内を通って聴覚を刺激する。
右耳は床から動かせない。
左耳は、落ちてきた天井の圧力で、除々に変形していく。

潰される


ここはどこなんです
どうしてまっくらなんです

わたしは死にたくな


109 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 06:29:16.33 ID:LEDq7wKmO
異母兄弟の( ゚∀゚)を虐待する从゚∀从

从゚∀从「酒無くなったわ。10分待っててあげる。」
そんな事、無理に決まってる。

( ゚∀゚)「姉さん、無理……」
从゚∀从「だまれ。行け。」

姉貴が視線を走らせた先を見て、靴も履かず鍵を開けた。

( ゚∀゚)「っはっ……はやく……っ」
財布を握り締め、深夜の町に飛び出すのと、キッチン鋏が右肩をかすめるのは同時だった。

( ゚∀゚)「いっ……てぇ」
焼ける肩を押さえながら、全力で走りはじめる
家に帰れば、きっとまたひどい目に合う。
けれど、そこにしか帰る場所は無い。帰らない選択肢は無い。

(;゚∀゚)「はぁ……はぁっ」
ひったくるように店の親父から酒を受け取り、家へむかい足を動かし続ける。

角を曲がる。暗闇の向こうに見慣れた家。門扉を開け玄関に手を……

ごっ

( ゚∀゚)「うぐぁっ!?ア゙ア゙アアァァァ……」

後頭部から世界が揺れ、近づく地面を認識した時、意識は千切れた。

110 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 06:33:01.70 ID:LEDq7wKmO
いつも両手広げて一緒に走った親父と、母親面したオバサンは、俺が4年の時、交通事故で死んだ。

俺は、ただ、何も考えられなかった。

オバサンはどうでもいい。アイツは親父しか見てなかったから。
俺は罵声と拳しか受け取った記憶は無い。

でも、姉貴はオバサンからよく俺を助けてくれた。
从;_从「ごめんね、ジョルジュ悪くなんかないのに」

ふわりと抱き締めてくれた香りが、巻き毛が綺麗だった『おふくろ』と重なった。

毎日必死で耐えて、笑って、馬鹿みたいにおっぱいやって、『おふくろ』を意識の奥に追いやり鍵をしていたのに。

大きくて、柔らかい胸に顔を埋めたまま、姉貴の服をぐしょぐしょに濡らすまで、涙と鼻水と涎はとまらなかった。

111 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 06:36:19.29 ID:LEDq7wKmO
……姉貴は、元からこうだった訳じゃ無かったっけ。


今の生活が『始まった』のは3年前、小5の夏
姉貴の部屋から、漫画を拝借しようとした時のこと。
ケージから逃げ出していたウサギ。
気付かなかった俺。
夕方暗くなりはじめた部屋。
机の裏から走り出る影。
足の裏の感触。
イキモノといえなくなってしまった物。

優しくて、笑顔が優しくて、そして俺の唯一の味方だった姉貴は、その日いなくなった。


112 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 06:37:43.45 ID:LEDq7wKmO


( ∀ )「っ……つう……」
目が開かない。頭が揺れる。

( ∀ )「なん…だったんだ」

意識がぶれる。記憶が混ざり合う。
( ∀ )「あねき……うさぎ……」

口から漏れる声とは別に、左手が床を無意識になぞっていく。

ぬちゃ

( ゚∀゚)「!?」
粘つく何か。同時に背筋を無数の虫が這いずりまわった。

( ゚∀゚)「うっうわぁぁぁあぁ!!」

ガチィィィッ

思わず仰け反った瞬間右足に衝撃が走る。
( ゚∀゚)「……ぐぅっ」

足の皮膚が破れたか。液体が足をつたう感覚がある。
痛みが和らぐのを待って、手を床で拭い、ジョルジュは鈍く痛む足を手探りで調べた。
( ゚∀゚)「……鎖??」
足が枷で壁に固定されているらしい。手でいじるたびに、じゃりじゃりと冷たい音がここに響く。


191 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 17:41:36.39 ID:LEDq7wKmO
>>179>>181すまんかった。投下再開。


( ゚∀゚)「目が開かねぇんじゃねぇ……まっくらなのか……」
( ゚∀゚)「ちっくしょおぉぉ!!」
思いっきり正面の壁を蹴り付ける。

(#゚∀゚)「うら゙ぁ!おおぁ!!」
足を伸ばしきれない程の空間の中で、怒りに任せ何度となく蹴り付ける。

無我夢中で蹴るうちに、足裏が違和感を感じた。
( ゚∀゚)「!?」
足を止め、手で違和感の主を探した。
( ;∀;)「どこだ!どこなんだよぉっ!!」

( ;∀;)「はぁっ!はぁっ!助けてくれぇぇぇぇ!」

( ;∀;)「?」
涙で歪んだ視界に、異変が起きている。

( つ∀;)

腕で、乱暴に目を擦って、涙を捨てると、わずかに光が四角く漏れてのに気付いた。
( ゚∀゚)「……お」

( ;∀;)「おおぉおぉぉお!!」
目茶苦茶に壁をなぐり、引っ掻き、蹴飛ばした。
つめが剥がれた様だったが、今は痛みも感じない。


193 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 17:59:37.46 ID:LEDq7wKmO
ごろり
そんな音と共に目が、本来の働きを取り戻していく。
壁の一部が崩れ、そこから弱々しい光がさしてきていた。
( ;∀;)「ああ……あ」
再び、涙で滲み始めた世界を見ようと、必死に目を凝らす。

やがて見えて来たのは、1メートル四方程、暗闇の中の部屋。
どうやら高さはあるようだ。立って手を伸ばしてみたが触れる物は無かった。

そして

光源の真下からジョルジュの下に広がる、液体。
細い糸の集まり。
均等にひしゃげた……肉。
( ∀ )

リカイシテハイケナイ

だが、脳はフリーズ状態を解除する。

( ゚∀゚)「  a 」

( ゚∀゚)「ぃっ……g……お゙ッ……」

( ;∀;)「お゙お゙お゙お゙おお゙ェ゙」

恐らくは、人だったモノに、胃の中身を、ぶちまけた。

194 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 18:05:28.44 ID:LEDq7wKmO
( ;∀;)「こっ……んのやろぉぉぉぉ」
体の自由を、奪っている枷を外そうと試みたが、金属を手で引きちぎる事が出来るはずがない。

( ∀ )「  う 」

死体と同じ部屋

( ∀ )「 ぁ  」

しにたくない

(#;∀;)「うわぁぁ゙ぁぁ!!おるぁ゙ゴルダッルァアァ!!」
力任せに床を殴り、背後の壁に頭を打ち付け、肘を突き立てる。
枷をちぎろうとむちゃくちゃに足を動かし、鎖を壁から引き抜こうとした。

血が吹き出す感覚はあるが痛みより、暗闇の恐怖、枷の恐怖、密室の恐怖が脳を覆い尽くしていく。

(#;∀;)「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」


195 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 18:13:23.38 ID:LEDq7wKmO
(;゚∀゚)「は……あ……ぅ………」
声が枯れ、拳が壊れ、足の皮膚が大きく剥がれていた。
後頭部からくび、背にかけてぬらぬらした感覚が伝っていく。


( ゚∀゚)「……」
足を肉の上に投げ出し、目の前の光をぼーっと見つめる。

( ゚∀゚)「ここ……どこなんだ」

痛みと、恐怖でマヒした頭。
光だけが正気を支えてくれているのかもしれない。
ぐちゃぐちゃと肉の中に、手を置いて、覗きこんだ。
( -∀@)


( ∀ )「……」


見間違いか。姉貴が。いる。

196 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 18:30:31.96 ID:LEDq7wKmO
ナゼ?ドウシテ?
理解は出来ないが、やれる事は一つしかなかった。
( ;∀;)「ねぇさん!ねぇさん、たすけてk」

从゚∀从「だまれ」

声が突き刺さる。感情が微塵も感じられない。

从゚∀从「私に得が無い。まったく価値が無い。ゴミは捨てられてその意義を全うできる」

淡々と語られる言葉は、理解してはいけない言葉。

从゚∀从「ゴミ以下、ならどうするか。」

頭に細かい粒が降ってくる。

从 ∀从「つぶして、そのままくさらせる」

死刑宣告、だった。
ジョルジュはまったく動けない。

砂の粒が頭に降ってくる

从 ∀从「しね。くさりはてろ」

姉貴の、姿が、丸い空間から、消えた。

197 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 18:39:51.74 ID:LEDq7wKmO
( ゚∀゚)「あ……」

姉貴の台詞を反芻する。
ツブス?クサル?

ぱらぱら

( ゚∀゚)「ねえさん……?」

ががが

ツブスって、俺を?腐るって俺のことなのか?
俺生きてるぜ?俺、死ぬのか?

ざりっざざざ

死んでたまるか

ゴグガッガガギガ

石の棺桶の中が擦過音で満ちる。

( ゚∀゚)「なっ!?」

咄嗟に立ち上が……れなかった。

199 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 18:55:39.96 ID:LEDq7wKmO
( ゚∀゚)「ア゙……ア゙……」
あるはずの無い物に頭を強烈にぶつけ、息が詰まる。
天井が落ちている。
ゆっくり、着実に。

( ゚∀゚)「あぁ、なんだ、もうむりか」
( ゚∀゚)「しにたくねぇなぁ」
( ゚∀゚)「がっはははっはっぃひゅっひゃははははぅいあっぎゃふぁっはっは」( ゚∀゚)「おいおい、こんなとこに入れられてむかう先は挽肉ですか、おれ」
……
( ゚∀゚)「おっぱい!!おっぱい!!おっぱい!!おっぱい!!おっぱい!!おっぱい!!」
( ゚∀゚)「ポペティ録画してなかったなぁ。」
( ゚∀゚)「まったくおれがなにしたtt」

……いれられて??
口が勝手に話したひとことを、耳が拾った。

いりぐちはどこよ。

( ゚∀゚)「俺、どこからここに入れられたんだ?」


201 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 19:12:02.52 ID:LEDq7wKmO
一足お先に死んでいた脳味噌が、もう一度回転し始める。
( ゚∀゚)「余裕が無ぇ!時間はっ!」
座ったまま上にのばした指先がアレに触れた。
( ゚∀゚)「くっそ!もう、こんなとこまで来てやがる!」

(#゚∀゚)「どこだぁぁぁぁぁ!!」
肉の固まりの中に手を突っ込み、床を探る。
(#゚∀゚)「てめぇ、つぶされてんじゃねぇ!!邪魔だぁァ亜!!」
左右の壁に肉片を飛ばしながら必死に探る。
(#゚∀゚)「ちぃっ!継ぎ目なんか無ぇじゃねえか!!」
(#゚∀゚)「なら……」
薄明かりの中、俺を閉じ込める壁。
(#゚∀゚)「だっ………ぉるあぁぁ!!」
こぶしを左壁に打ち付ける。
(#゚∀゚)「開けェェェ!!」
右壁に蹴りをねじ込む。

(#゚∀゚)「死ぬかヨォオ゙ォ゙ォ!!!」
背中の壁に体全体をぶつける。

ごっ

頭に絶望の質量が食らい付いた。

202 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 19:24:13.50 ID:LEDq7wKmO
俺は、無理矢理、頭を下げさせられていく。

下を向いてしまった顔。
髪が放射状に肉に埋もれているのか見えた。

( ∀ )「   いやだ 」

だんだん近づく、それ。

( ゚∀゚)「……死にたくねぇ」

ぴちゃ

右頬に何かが触れた。

( ;∀;)「イヤだァァァァァァァァたすけッたすけでぅぇ゙」
ぎりぎりと骨の歪む音が、体内を通って聴覚を刺激する。
右耳は床から動かせない。
左耳は、落ちてきた天井の圧力で、除々に変形していく。

潰される


205 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 19:49:33.94 ID:LEDq7wKmO
ナゼだ。まだ生きている。
顔は肉に埋もれているが横を向いたおかげで、呼吸は出来る。
天井は止まった、のか?

( ゚∀゚)「はぁ……はぁ」自分の呼吸音だけが、ぎりぎりの空間に響く。

ズッ
( ゚∀゚)「なん……だ?」左耳がかすかな音を聞いた。何かが擦れて、抜けるような。

突然、石が削れる音がした。同時に頭の拘束が、弛み、解けた。

( ;∀;)「助かった……のか??」
目が眩しくて開けられない。
( ;∀;)「ありがとう!たっ……たすけ」
(  )「どう?部屋の住心地は」
突然、言葉を遮り、上から声が落ちてきた。
(  )「作るの大変だったのよ?途中でお金も無くなるし」
( ∀ )「……」
何を言ってるんだ?

(  )「だから……父さん母さんには」
( ∀ )「……やめてくれ」
くびをねじって横目で光の中、立つ人間を見た。
从゚∀从「死なせて換金させてもらったわよ」
( ;∀;)「はい゙ん゙り゙ーーっひーーっっ!!」

ゴチュッ

アイツが見えなくなった。長い足の先のピンヒールが最後の映像。

208 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 20:01:26.49 ID:LEDq7wKmO
(#;∀ )「あ゙あ゙あ゙あ゙あ」
从゚∀从「作ってくれた大工で、試運転させてもらったんだよ」
从゚∀从「で、お前が、本番ってわけよ」

从゚∀从「そろそろ生きてるのも辛いでしょ」

从゚∀从「じ ゃ あ ね」

いやだ。くらいのは、いやだ。

顔を右に向け残った目で、奴を見た。

从*゚ー从

昔、大好きだった、笑顔が、俺の世界に蓋をした。


210 ◆NpqLp96rfA sage New! 2006/07/19(水) 20:04:36.56 ID:LEDq7wKmO
光が無くなった。もう、無理か。
(#;∀ )「最っ……後…に」
もう一度笑ってる姉さんを見たかった。
無理矢理顔を動かす。石に耳が押しつけられ、擦られ、切れた。

(#;∀ )「ねっ……ぇさ」目を穴に押しつけ、外を見た。


                         /    / /!      `ヽ   `ヽ
                      / //   { / { ト、 |  }ハ   、
.           ._          |l{ { | ∧{ ヽ.{‐ヽト、ノ}ノハ   ! ! やっつぁっつぁっ ぱれでぃっぱりらんらん
           | |.          lハハlヽ{ `        ☆ハl  | | でぃっぱりりんらん ぴちたんるんらー
           | |  _,      | ハ. ,== 、   == 、 !  l  | | りぴたびだんらー るっぱでるぴらん
       三 |   ̄_|      ヘ ′          |  |  | l これがんぐぉっこや きりがんぐー
. \ / > -― | | ̄   ミ   / /i"" rー----‐‐┐"" }  }  j/  ぁらっつぁっつぁーや りびだびでぃんらば
    //  三 | |  ミ ./   \ 、 ヽ、    ノ   イ/ /  ,′ りちたんでぃんらんでんらんどーあば
.     X  /   | | ミ / /\/ .>  二二´ イ リ' /  /   りっぱった ばりっばりばりべ
.   /  / 、    | |   /  ヽ | /i   /|  /⌒> /   ′  りびりびりすてんてんらんどーやば
.   ,′ ,  \  | |__       |斗‐ ¬{  j/  〃/‐- {    りんらすてんらんれんやろーわらば
  {      /´ ̄`'J         从{   }ィ个 、_/{ {   ,ヘ   らばらばれべどぅぶどぅーやぶぅー
   ―  --  {    }     /  ,ゝ、   ノ    八{ゝ /  ヽ、 ゎりずだんでぃんらんぜんらんどばだけ
    ‐ ―  ヽ. _人   /  /     o/         _   \ だげだげどぅーどぅーでいやどー
       / /ヽ l | \ く  /      ,′   ※,. -┴-ヘ   〉
    ヽ / /ミ  | |、   `く\{        {      jl{     }| /!
   / / ミ   . | | \    X    oヘ、   /八__ノl|く |
天と地が一つになった。
【完】

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