773 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/16(日) 18:06:31.66 ID:nx3xdwn30
夏らしいじりじりするような青空も夕方になるとみるみるうちに曇り始めた。
空に沸き立っていた白い入道雲も黒い雷雲へと変わり、遠くからはゴロゴロと遠雷の音が響いている。

( ^ω^)「一雨きそうだお」

タクシーのフロントガラスから空を見上げ、ブーンは呟いた。

( ^ω^)「着きましたお、お客さん」

('A`)「ん・・・ふぁあああ」

男はあくびをしながら背伸びをした。熟睡していたらしい。

('A`)「あぁ、もう着いたの。いくら?」

( ^ω^)「二千円ですお」

('A`)「二千円ね。ハイ、ありがとさん」

男はブーンに運賃を渡すと車から降りた。まだ寝ぼけているのか歩調がたどたどしい。

( ^ω^)「ふぁあお。客が寝てるとこっちまで眠くなるお
      今日はもう帰ってサザエさん見るお」

眠そうに呟くと、ブーンは再びタクシーを走らせた。
フロントガラスにぶら下げたマスコットの人形がカタカタと揺れる。


774 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/16(日) 18:07:39.71 ID:nx3xdwn30
10分ほど経った頃、予想した通り雨が降り始めた。それもかなりの豪雨である。
ワイパーを最速にしても視界がはっきりしないほどだ。

( ^ω^)「これはひどいお」

その時、辺りを白い閃光が包み、その後訪れた一瞬の静寂を切り裂いて
轟音がとどろいた。雷鳴だ。

(;^ω^)「雷テラコワス・・これは飛ばして帰ったほうがいいお」

普通なら減速して行く所を制限速度オーバー気味に飛ばすブーン。
そうしているとふと、視界の端になにか白いものが映った。

( ^ω^)「ん?今のなんだお?」

サイドミラーで確認するとどうやら女のようだった。白いのはおそらく雨合羽を着ているのだろう。
雨のためミラーが濡れてはっきりとは分からないが、合羽の隙間から長い髪を覗かせジッとこちらを見ている。

( ^ω^)「なんかあの人乗せて欲しそうだお」

( ^ω^)「マンドクセ。サザエさん>>>>>>塗り壁>>>>お客だお」

どうせもう20メートルは通り過ぎていたのでブーンはその客をスルーした。


775 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/16(日) 18:08:53.53 ID:nx3xdwn30
それから20分は走っただろうか。長い山道にいいかげんウンザリしてきたブーンは
ラジオをつけた。しかし山道を走行しているせいか、やたらとノイズが混じる。
それほど市街地から離れているわけでもないのに・・

( ^ω^)「そういえば来る時こんなに時間かかったかお?」

ブーンは今、先ほど客を乗せてきた道を走行している。

(;^ω^)「なんかずっと同じ道を走ってる気がするお・・」

フロントガラス越しに見える景色は延々と続く森や山だけだった。
山道を走行していると陥りがちな錯覚だが何かがおかしい。
灰色の空、木々の緑・・・緑・・・・緑・・・・白・・・・・

( ^ω^)「んお?白?」

(;^ω^)「!!」

それはさっきの白い雨合羽の女だった。
30メートルほど先の路端にたたずみジッとこちらを見ている。

776 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/16(日) 18:10:06.89 ID:nx3xdwn30
(;^ω^)「さ、さっき通り過ぎたのになんでここにいるんだお・・・・・やばいお!
      世にも奇妙な世界に迷い込んじゃったお!」

言いようのない恐怖を感じたブーンはアクセルを踏む力を強め、一気に
その場を通り過ぎようとした。出来るだけその女を見ないように――
しかし一瞬視界に入ったソレを遮ることができず、その顔を見てしまった。

川∀川

遠くを見ているような眼で、そしてうっすらと笑うその顔の
少しあがった口の端に、よだれがかすかに光っていた。


(;^ω^)「幽霊って本当に怖いですね。さよなら、さよなら、さよなら」

直感でそれがこの世のものでないと悟ったブーンはアクセルを全開にして
その場を去ろうとした。



777 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/16(日) 18:11:11.17 ID:nx3xdwn30
ひたすらタクシーを飛ばすブーン。

(;^ω^)「やったお!トンネルだお!」

ブーンは見覚えのあるトンネルにたどり着いた。
確かここを抜ければ市街地に出られるはずだ。

しかしブーンのタクシーがトンネルに入った瞬間、トンネルのライトが
いっせいに消えた。

(;^ω^)「あれ?停電かお?暗くて前が見えないお!」

ブーンはヘッドライトのボタンをカチャカチャといじる。

(;^ω^)「ちょwwwwwwwwライト蛾ぶっ壊れたお!
      ブレーキも効かないお・・・・・・そ〜りゃないお〜次元〜!」

雨の日、狭いトンネルの中で、ライトもなしに80`以上のスピードで走行するとどうなるか?
ブーンはその答えを自分の体で体感した。
      

778 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/16(日) 18:11:55.34 ID:nx3xdwn30
トンネルの側壁に衝突し大破するタクシー。衝撃で変形した車に押しつぶされるブーンの胴体。

( ゚ω゚)「う・・・・うぅ・・・・は、腹がぁぁ・・僕の腹がぁぁぁあ」

ブーンは虫けらのように腕をばたつかせ足掻いた。
しかし――その動きも次第に弱弱しくなっていく。

( ゚ω゚)「サザエ・・・さん・・・・見れなかったお・・・・」

段々と冷たくなっていくブーンの耳元で女がつぶやく。

川д川「フフ・・・・サザエさんのネタバレ・・・・・」








川∀川「犯人はヤス」

( ゚ω゚)「あるあ・・・・ねー・・・・・・・・お・・」

ブーンの思考はそこで途切れた。


おわり
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