84 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:12:04.11 ID:VUBrtBMOO
世の中には奇妙で不可思議な事がある。
今日はそれらの中から一つ、話をしようか。
 
 
辺りに広がるのは薄暗い森、青臭い木々。
人気のない鬱蒼とした森にその屋敷はあった。
どうやって来たかは覚えていない。


86 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:13:02.58 ID:VUBrtBMOO
( ^ω^)「不気味な屋敷だお…」
 
彼の名は内藤ホライゾン。VIP高校に通う三年生だ。
 
何故、この場所に来たかといえば首を傾げる事になる。
気がついた時には森を彷徨い、引きつけられるかのように偶然、その屋敷に辿り着いたのだ。
 
数日前、彼のクラスの女子が失踪した。
女の名はクー。
彼女は内藤を好いていたので有名だった。
場所を選ばずに自分の気持ちを伝えていたせいか、内藤とクーは一躍有名人になったものだ。
しかし内藤には密かに思う女性がいたので交際を断り続けていた。
そしてある時、彼女は姿を消す。
捜索届けを出しても彼女は見つからず、警察は事件性有りと判断し、現在も捜索を続けている。


87 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:14:37.51 ID:VUBrtBMOO
警察が事件性を疑うのには理由があった。
…クーが失踪する前に、内藤のクラスの男子も行方不明になっていたのだ。
その男の名はドクオ。
内藤とは小学校からの付き合いで、彼とは親友であった。

88 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:15:03.78 ID:VUBrtBMOO
相次ぐ生徒の失踪。
事件の可能性は高い。
警察も本腰を入れて調べているだろう。
 
( ^ω^)「迷ったし、道を聞いてみるお。ごめん下さいおー」
 
返事はない。
 
( ^ω^)「留守かお? てか人住んでるのかお…?」
 
扉が、開いた。
数秒前には鍵が掛かっていたのだが…。
 
( ^ω^)「おっおっ、誰か住んでるっぽいお」
 
屋敷の主人が出て来るかと待っていたが、一向に出て来ない。
 
( ^ω^)「…? でも扉は開いたし、入れって事かお?」
 
許可がないのでためらいはしたが、結局入ることにした。

89 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:16:28.09 ID:VUBrtBMOO
屋敷の中は外にも増して薄暗く、カビ臭かった。床には埃が積もっており、とても人が住んでいるとは思えない状態だ。
 
( ^ω^)「ごめん下さいおー……」
( ^ω^)「おかしいお。誰もいないどころか、もう何年も人が住んでないみたいだお……ん?」
 
暗いので気がつかなかったが、床を見ると無数の足跡がある。
埃の積もり具合を周りと比べてみても、比較的新しい。
 
( ^ω^)「……行ってみるかお」
 


90 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:17:19.37 ID:VUBrtBMOO
内藤は足跡を追って歩き出す。
薄気味悪かった。
内藤はそれほど肝も座っている訳ではない。
だが、恐怖は感じなかった。
 
歩いて行くと広い部屋に出た。
そこには非常識な形のオブジェが無数に立ち並んでいた。
工房だろうか?
腕のような物が一本生えているような物、角のような物が飛び出している物まで様々だが、シンメトリーとはほど遠い。
ただ、それらには決まって顔のような物が備えられ、いずれも苦しみもがいているような表情を思わせる。
常人ならこんな物を造ろうとは思えない数々のオブジェで囲まれた部屋。
そのせいか異空間に迷い込んだ錯覚さえした。
 
( ^ω^)「なんだコレ、きめぇwwwwwww」
 
内藤はオブジェの一つを手に取って観察する。
見事なまでに醜悪さを放っている。
それを置き、別のオブジェを見ようと頭を巡らせた。
 
( ^ω^)「!!」
( ^ω^)「なんかこの人形、ドクオに似てるお…」

91 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:18:26.25 ID:VUBrtBMOO
ドクオに似ているオブジェを眺めながら、昔彼が語った事を思い出す。
ドクオはクーに好意を持っていたが彼は内気で、しかもクーは内藤が好きなだという事実も知っていた。
そんな彼に告白する勇気がある訳もなく、その思いだけが募っていった。
そこで内藤にその事を打ち明けて心の負担を減らそうとしたのだ。
…随分昔のことだった。
 
( ^ω^)「コレを見てるとドクオを思い出すお…」
 
内藤はドクオに似た顔を持つ人形をソッと元の場所に戻した。
声が聞こえた。
 
(;^ω^)「!?」
 
その声の主を探すが周りに人の姿はない。
 
『タスケテ…』
 
しかしまだ聞こえる。
それも、内藤の名を呼んでいるのだ。

92 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:21:29.68 ID:VUBrtBMOO
『タスケテ内藤君…』
 
(;^ω^)「だ、誰だお!? 姿を見せろお!!」
 
平然と此所まで来れたのが不思議なくらいに身体が震え始めた。冷や汗が止めどなく溢れ、逃げ出したい欲求に駆られた。
振り返って駆け出そうとした時だった。
 
(;;^ω^)「!!!!!」
 
川@。д゚)「内藤…君」
(;^ω^)「く、クーかお…?」
 
そこには、不格好な粘土の塊──異形の姿に成り果てたクーがいた…。
 
川@。д゚)「内…トウ…k…」
 
言葉を発した顔もどきが表情を失い始め、やがて完全な粘土と化してしまった。
 
(;;゚ω゚)「うわああああああああああ!!!!!!!!!!!」
 
内藤は走る。
こんな所にはもういたくない。
早く出て行きたかった。
だが…
 
(;;゚ω゚)「あ…あ…」
 
部屋の扉は、開かなかった。 
………………………………………………………………………………………………………………………

93 タイトル決めてない New! 2006/05/15(月) 23:22:34.16 ID:VUBrtBMOO
内藤があの屋敷に辿り着いたのは必然なのかもしれない。 
その後、彼の姿を見た者はいない。
そして、あの部屋にオブジェが一つ増えている事を知る者も……。
 
 
 
ξ゚听)ξ「此所はどこかしら…?
それにしても不気味な屋敷ねぇ…。とりあえず中に入ってみましょうか…」
 
          終

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