530 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:41:47.90 ID:kP1xp6Sg0
書いて消すのもアレなので投下ー
眠くて面白いのか分からん



(´・ω・`)「悪く思わないでね」

ボクはそう言って、刀を振り下ろした



/*ヨミニサクサクラ*/



すっかり慣れた死体の片づけを終えて、歩くは夜の繁華街
いまどきテッポウも使わない、刀使いの気取った殺し屋
冥府魔道? 実体はそんなにカッコいいわけでもない
コソコソ隠れながら、地道な信用商売 それがボクの稼業だ
都会の真ん中で見上げた空には星一つなくて、
ぼんやりと輪郭をにじませた月が一個、浮かんでいる

531 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:42:28.63 ID:kP1xp6Sg0
('A`)「よぅ、ショボン、精が出るな」

立ち止まってタバコに火をつけていると、そう声をかけられた
ドクオ。友達ってほどじゃないが、知り合いってほど疎遠でもない
時々手伝ったり手伝われたり
最近はドンパチも少ない。殺し屋仕事もシェアの時代だ。夢も希望もない

(´・ω・`)「今月はなんかキナ臭いね」

最近暑いね、くらいの調子で、そんな挨拶
ドクオもボクの隣に並んで、タバコを取り出して火をつける

('A`)「なんかねー、空気読めないガキが、バールのようなもので暴力団潰そうとして大暴れしているとかしてないとか、そんな話をチラッと聞いた」

(´・ω・`)「無茶苦茶な話の上、曖昧だね。ドクオらしくもない」

ボクが言うと、ドクオは肩をすくめた
情報と金が生命線。小心と言われるくらい慎重なドクオの口癖だ

('A`)「その無茶苦茶を通せる程度に強い上神出鬼没で、情報網ズタズタらしい。ツンが嘆いていた」

(´・ω・`)「ツンが嘆いてたの? 嘆いてたのはツン? じゃあよっぽど大変みたいだね」

('A`)「みたいだね、じゃねぇバカ。たまには顔出せ。第一、人づての三次四次情報を聞いてるようじゃその内ぶち殺されるぞ」

ボクは力なく笑う。ドクオは舌打ちすると、ろくに吸ってもいない煙草を投げ捨てる

('A`)「あーそうだな。お前はぶち殺され希望だったな」

533 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:43:48.52 ID:kP1xp6Sg0
ボクの心に虚無が張り付いたのは、いつの頃からだったろうか
少なくとも大学に入ったときには、ボクはすっかり、生ける屍に成り果てていた
引きこもりになったとか、そういうわけではないけれど

なんとなく剣道を始めて
なんとなく居合いに移行して
なんとなく真剣を買って
それからなんとなく、人を殺してみた

以来、気楽な殺し屋稼業

(´・ω・`)「別に、ぶち殺され希望、ってわけでもないけどね」

('A`)「似たようなもんだ。生きる気がない奴は死ぬんだよ」

534 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:44:47.94 ID:kP1xp6Sg0
(´・ω・`)「ドクオが言う台詞ではないね、絶対」

ボクは笑う。ウツダシノウなんて言ってる人間が、よく言ったものだ

('A`)「余計なお世話だ――まぁいい、ともかく、なるたけぶち殺されるなよ」

ドクオは言って、歩いていく。「おーらい」とボクは答えて、そして、付け加えた

(´・ω・`)「そういえば、ドクオにしては珍しい台詞だよね。なんで?」

ドクオは立ち止まり、すぐに振り返って言った

('A`)「俺は友達が少ないんだ」

手をちょっと広げて
おどけた風に

535 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:45:27.73 ID:kP1xp6Sg0
(´・ω・`)「ツンによろしく言っといて」

ドクオは「おーよ」と答えて歩いていく
ボクもまた、あてどもなく歩き出す

友達、ね。友達か

(´・ω・`)「友達、ねぇ?」

別に否定するわけでは、ないけれど
その言葉は、だだっ広い荒野にただ放られたボールのように、
響きもせずてんてんと跳ねて、
見えないほどではないけれど、ちょっと遠い場所に止まる

あてどもなく歩いて
できるだけ人気のないほうへ
湖水のように澄んだ空気のある方へ
孤独のように澄んだ空気のある方へ

気づけば、オフィス街だった
真夜中だ。猫の子一匹どころか、人っ子一人いやしない
なぜだか、落ち着く
タバコを取り出して、火をつけた

昼間は人通りも多いのだろうか
今は耳が痛いくらいにシーンとして

536 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:46:03.28 ID:kP1xp6Sg0
(´・ω・`)「……?」

だから、その音にもすぐに気づいた。
カラカラゴロゴロ言う、ちょっと高い音
鉄パイプを、アスファルトの上で引きずったら、こんな音が出るのだろう

(´・ω・`)「誰だい?」

近づいてくる音に、ボクは声をかける
それほど大きな声ではなかったから、ボクの問いかけは夜気に拡散して消えた
だから、彼は別に答えたわけではなかったのだろう

???「はじめまして、だお」

ボクのすぐ隣に立って、彼はそう言った
それが、彼なりの礼儀か何かだったのか

( ^ω^)「そして、さよなら」

彼が振り上げたのは、バールのような――

537 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:47:53.75 ID:kP1xp6Sg0
(#^ω^)「逃げられると思ってるのかお!」

ボクは走る。結構鍛えてるはずなのに、その若者はじわじわと距離を詰めてくる

(#^ω^)「それに、そっちは繁華街とは逆だお! マヌケ!」

空気の読めないガキというのはこれか
早速運がいいやら悪いやら
いや、悪い方かな。生憎、刀を持ってない

(;´・ω・`)「ハッ、ハッ、なんてッ、スタミナだッ。連邦のッ、モビルスーツはッ、化け物かッ」

ひたすらに走る
でも何のために?

悪態をついても、それは本心ではなくて
ひんやりとした空気が胸に流れ込んできたような
体は火照っているのに、芯から冷えていくような

(;´・ω・`)「殺されッ、かけてもッ、ハッ、余裕ッ? みたいなッ、あるあ……ねーよ」

538 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:49:06.91 ID:kP1xp6Sg0
どれだけ走っただろう
ボクはどこかの公園へと走りこんだ

さっきの路がちょっと入り組んでいたのがよかったらしい
若者は見えなくなっていた。ただ、まだ安心はできない

(;´・ω・`)「もう少し…………引き離して」

フラフラしながらも走る
息はすっかり上がっている。大盛汗だく

でも、胸の冷たさはいまやピークだった

何で逃げる?
逃げる理由も無いくせに
逃げても何も無いくせに

夜の公園を走って、視界が開けて、
そこで、ボクの膝ががくりと折れた

539 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:49:21.78 ID:kP1xp6Sg0
疲労? それもある
困憊? その通り

しかし、それ以上に

(;´・ω・`)「サクラ――?」

サクラが咲き誇っていた
青白い光に包まれて、花びらが舞っていた
季節はずれもいいところなのに
場違いもいいところなのに
サクラが咲き誇っていた
それ以外は何もなくて
ぼくは立ち上がることもできなかった

540 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:50:12.53 ID:kP1xp6Sg0
そしてどれくらい見ていただろうか?

(#^ω^)「ギブアップかお?」

後ろでそんな声がした
あの若者の声がした

(#^ω^)「手間かけさせてくれたお……でも、安心するお。きっちり一撃で脳天カチ割ってやるお」

彼の声は遠く聞こえた

(´・ω・`)「そうか。じゃあ、そうしてくれ」

(#^ω^)「何を言ってるお。惨めに命乞いをするお。て言うかこっち向くお」

ぼくは答えない

(#^ω^)「こっち向くお!」

ぼくは答えない

(#^ω^)「〜〜〜〜〜〜ッ! じゃあ、そのまま死ぬといいお!」

ブゥンと風を切る、バールのようなものを振り上げる音

(´・ω・`)「それがいいよ」

ボクの言葉を、彼は聞いていたのだろうか?

541 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/15(土) 21:52:46.97 ID:kP1xp6Sg0
サクラの花が散っている
これが死ならば悪くない
サクラの花が散っている

黄泉に咲く
桜の花に魅入られて



おしまい

inserted by FC2 system