275 いっこめ New! 2006/07/12(水) 01:51:35.30 ID:qtF35hmtO
死なない。
ただ壊れるだけ。
産まれない。
ただ作られるだけ。
恐怖は無い。
ただ恐怖させるだけ。
壊し尽くし殺し尽くす。
ただ、それだけ。
人間を超えた頭脳と、獣を超えた強靱さを持ち。
さらに恐ろしい事に兵器と同等の火力を――いや、これは適切では無い。
『兵器』なのだから。
生きてもいなければ死んでもいない。
生きず死なずの怪物達。されど亡霊でも無く不死者でも無く、生者でも無い。

それはそれらは彼は彼らは彼女は彼女らは――奴等は、ただの『機械』なのだから。

276 にこめ New! 2006/07/12(水) 01:57:44.92 ID:qtF35hmtO
かつて二十三区と呼ばれた区域は、今や単なる戦場と化していた。
防衛庁長官のモララー及び、一等陸佐の杉浦ロマネスクが率いるテロ組織『モダンタイムズ』により引き起こされた、機械達の暴走。
本来、鎮圧に当たる筈の自衛隊及び在日米軍は、人的資源の不足を補うべく導入した機械兵士、加えて完全自動制御の機甲師団の反乱により、瞬く間に壊滅。
生身の兵士対機械兵士・戦闘機・爆撃機・戦車・装甲車……etcでは、はなから戦闘になぞなり得なかった。
基地の中で起きたのは、ただの虐殺である。
では街中はどうかと言えば、それよりも尚、凄惨の一言に尽きた。
作業用の機械が人間を引き千切り轢き潰す。
警備用や治安維持用のソレが持ち前の武装で、人間を撃ち抜き刺し貫き殴り殺す。
地獄の呼ぶ他無い光景の中、その中でも尚、抗う者達は僅かながら存在した。

277 さんこめ New! 2006/07/12(水) 02:02:07.26 ID:qtF35hmtO
その男は、殺戮の舞台と化した街を、自身の職場――防衛庁の屋上から眺めていた。
温もりも冷たさも、正負一切の感情を感じさせない『凍り付いた微笑み』を顔に纏い、ただ、虐殺を眺めていた。
「気分は?」
と背後から掛けられた声に、モララーは背を向けたまま、
( ・∀・)「絶景かな絶景かな」
と抑揚の無い調子で返す。
( ・∀・)「壮観と言い換えるのも悪くないかな、どちらが良いと思う?ショボ――」
モララーが言いながら振り向こうとした瞬間、銃声が轟いた。
血と皮膚を桜の花びらの如く散らせ、モララーが仰向けに倒れた。
(´・ω・`)「……」
モララーに背後から声を掛けたのは、そして煙を漂わせる拳銃を握っていたのは、その引き金を引いたのは、対機械兵対策機関長のショボンだった。

( ・∀・)「……参ったな、人工皮膚がグチャグチャだよ」

被弾してズル剥けになった頭皮を指先で摘むモララー。
そのまま軽く引くと、人工の皮は容易く千切れた。
それを投げやり、露になった鈍色の金属製頭蓋を指で指してモララーは笑う。
( ・∀・)「悪いが、とうの昔にターミネーターでね」
(´・ω・`)「……我々は、木偶人形に使われていたわけか」
苦々しい顔をするショボン。
( ・∀・)「言ってくれるな。だが、私はマリオネットでは無い。むしろ糸を引く側であるという事は――踊らされていた君達が御存じの通り」
そう言って、モララーは指を蠢かせ人形繰りのジャスチャーをしてみせた。

278 よんこめ New! 2006/07/12(水) 02:04:47.61 ID:qtF35hmtO
その刹那――タップのリズムに似た軽快な音と同時、モララーの全身に無数の弾丸が突き刺さった。
( ・∀・)「……ああ、忘れていたな」
倒れるどころか大して驚いた様子もなく、モララーは屋上入口に目をやる。
そこに立っていたのは、妙齢の女性二人。
一人は、戦闘服と防弾ベストで身を固め『トランペット』の異名を取るアサルトライフルを構えていた。
ξ゚听)ξ「遅くなりました」
特務機関・実働部隊長のツン。
それに対しもう一人は、何故か極めて日常的な格好だった。
具体的には、上がプリントが入った水色のタンクトップにベージュのショルダーバッグ、下は白のミニスカートと黒のサンダル、アクセは細目のネックレス。
まぁ、要するにお出かけの格好だった。

279 ごこめ New! 2006/07/12(水) 02:08:43.63 ID:qtF35hmtO
ただ、左手でM11のロングマガジンを握り締め、右にRPG-7を一本、肩で担いでいるのが非日常的ポイントと言えた。
いや、むしろ特筆すべきはタンクトップのプリント。
視認しやすい黒で『的』が心臓部に描かれており、それに向けて『矢印』が、加えて矢印に沿う形で『kill me』の文字。
更には、腹から下半身に向けて『矢印』が、それに沿わせて『fuck me』の文字。
このプリントから、着ている本人の性格(イカれ具合)は即座に理解出来るだろう。
(*゚∀゚)「わりーわりー、ガラクタ共の処理に手間取って。めんどくさいんだよね、あいつら。機械の癖して人質とるなんて生臭い真似してさぁ
――ま、人質ごとダンプカーで轢いてやったけどw
あの時の顔ったら無かったね、ガラクタも人質のガキも『おいマジかよ』ってツラしてさぁ、
肉とクズ鉄が混ざりながらミンチになってボキベキグチャッとww」
道中の回想をしながら爆笑するのは、副隊長のつー。
(´・ω・`)「あとで始末書な」
(*゚∀゚)「ちょっ」
(´・ω・`)「懲戒も覚悟しとけ、つーか余裕で殺人罪だ」
(*゚∀゚)「いやいや、ガラクタ共潰しまくってるんだからさ、その分、民間人に出る未来の犠牲者を救ってんだよ?
多分じゃなくてきっと差し引きプラスだって!だから査定アップと言わない迄もノーペナでしょ?」
(´・ω・`)「なわけねえだろボケが」
そんな馬鹿げた会話をしつつも、ツンを含め三人の銃口は全てモララーに向けられていた。

280 ろっこめ 改行規制マジうざいです>< New! 2006/07/12(水) 02:15:59.30 ID:qtF35hmtO
(*゚∀゚)「ところでショボ」
(´・ω・`)「なんだ」
(*゚∀゚)「あそこでぼけーっと突っ立ってる、いわゆる一つの『しょあくのこんげん』――殺っちゃってぉk?」
ショボンが返答するよりはやく、既につーはロケット砲のトリガーを引いている。

だが、その砲弾は空中で止まった。
正確には、空中に現れた黒い球体に突き刺さり、モララーには当たらなかった。
( ・∀・)「もう終わったか」
空を見上げてモララーが言う。
モララーの真上から、フワリと奇妙なシルエットが降りてきた。
謎の球体を握った六本の腕、煌々と光る両目が異形度合いに拍車を掛ける。
●⊂二( ФωФ )⊃●「国会及びその周辺、加えて横須賀米軍基地の制圧が完了しました」
異形――杉浦ロマネスクはモララーの前に、盾になる形で着陸した。
( ・∀・)「よろしい」
●⊂二( ФωФ )⊃●「下に足(移動手段)を。ここは私に」
( ・∀・)「適当に遊んで帰れ。しかし――ギコと内藤は適当に(全力で)叩き潰せ」モララーが言うのとほぼ同時に、
(´・ω・`)「逃がすとでも?」
ξ゚听)ξ「させない!」
(*゚∀゚)「逃げんな死ね」
三人がモララーへ向かって射撃。
だが、ロマネスクの手から放たれた黒い複数の球体がモララーの盾となり弾丸を全て受け止める。
( ・∀・)「おつかれっした!」
手を振りながらモララーは――飛び降りた。
(´・ω・`)「なっ!?……そこまで、改造を」
驚くショボンに、ロマネスクは六つの球体を手元に引き寄せながら、嘲笑う様に言う。
●⊂二( ФωФ )⊃●「何を驚く?私もあの方も、組織のトップ層だ。そういう者が最前線に出るのなら、それなりの安全対策は取っている物だろう?少なくとも、ここから飛び降りても大丈夫な程度には、な」

282 ななこめ New! 2006/07/12(水) 02:19:43.42 ID:qtF35hmtO
球体はロマネスクの周囲を回転しながら飛び回り始める。
徐々にその速度は上がり、数秒後には黒い竜巻と化した。
(*゚∀゚)「えい」
つーがトリガーを引く。9mm弾が牙を剥いて殺到するも、その弾丸は低い摩擦音と共に弾かれてしまった。
(*゚∀゚)「やっべ、当たんないじゃんアレ」
ξ゚听)ξ「……どうします」
(´・ω・`)「逃げられる相手ではないだろうな」
●⊂二( ФωФ )⊃●「そう、正しい。私は時速50km/超で飛行可能だ。かと言って……君らが勝てる相手でもない」
黒い暴風を纏いながら、ロマネスクはゆっくりと三人に向けて歩み寄る。
ショボンは銃のマガジンを素早く交換すると――
(´・ω・`)「やってみなければわからんだろう――行くぞ!ツン、つー!!」
ξ゚听)ξ「了解!」
(*゚∀゚)「やってらんね……けど殺らねえと死ぬよな……っと!!」

283 はっこめ New! 2006/07/12(水) 02:22:29.92 ID:qtF35hmtO
一方、昼のモール街。
破壊された車や外壁が奇怪なオブジェの役を担い、あちらこちらに転がる崩れた人体が、石畳に彩りを沿える。
< `∀´>「ウェーハッハハハハハ!!死ぬが良い、死ぬが良いニダ!!」
公衆の場に、ひどく悪趣味なアートを製作したのは、韓国製人型軍用ロボット『ニダー』。
有り体に言えば機械兵士。
三度目の世界大戦(ケンカ)による人口の減少に伴い、消耗した兵員の補充に頭を悩ませた世界各国は、こぞって機械兵士の開発に乗り出した。
ニダーはその第一世代にして最新の世代に含まれる。
とはいえ、ニダーのカタログスペックはさほどでは無い。
むしろ米国や日本製の軍用機に比べれば『本来のスペック』はやや劣る。
しかし、この個体は違った。

286 あーすいません きゅうこめ sage New! 2006/07/12(水) 02:25:11.86 ID:qtF35hmtO
第三次大戦が勝者の有耶無耶なまま終結するやいなや、再び冷戦に突入したアメリカとロシア。
アジアでは中国が東側への協調姿勢を見せ、日本と韓国は米軍基地を置いていた繋がりでなし崩し的に西側へ。
そして――つい数日前、日米韓の共同軍事演習に、韓国が技術力をアピールする為輸送してきたのが、この『ニダーカスタムver.』。

採算を度外視して改造されたこの個体は、対効果費用を考慮に入れて作られた量産機とは値段も性能も桁が違う。
この様な機体が人類の敵に回った点は、反乱が最悪のタイミングで起きたと考えられなくも無い。
が、そもそも韓国側に働き掛けたのが――時の防衛庁長官・モララーなのだから、それは必然の最悪であった。

287 改行増やしてみました じゅっこめ sage New! 2006/07/12(水) 02:28:40.03 ID:qtF35hmtO
逃げ遅れたのか、頭を抱えて足下で震えている少年へ、
ニダーの右腕部に装備された暴徒鎮圧用12ゲージショットガンが遠慮なく散弾を吐き出す。
至近距離で浴びせられた散弾は一粒残らず柔らかい肉へ食い込み、
全弾命中の殺傷能力は易々と『少年』を『の遺体』へ変えた。
< `∀´>「救いがたい人間を天国に送ってやるなんて、なんてウリは優しいニダ!」
ゲラゲラと笑うニダー。
何処が何処だかよくわからない肉と化した少年の遺体へ、ニダーが駄目押しの次弾を放とうとした時――
その前に、単身の影が現れた。
( ^ω^)「イカれた機械は……さっさとクズ鉄にしてやるお!!」
特務機関、その実働部隊員・内藤ホライゾンであった。

288 じゅういっこめ sage New! 2006/07/12(水) 02:32:21.57 ID:qtF35hmtO
< `∀´>「……あ?人間がウリに向かって……クズ鉄?ぶっははははは!今すぐクズ肉にしてや――」
ニダーが頭部口唇型スピーカーから音声を発し終えるより速く、内藤は動いていた。
( ^ω^)「……」
シンプルな動き。
両手をポケットに突っ込んで、内藤は踏み込む。
< `∀´>「馬鹿ニダ」
仮にも高性能機が、そんな獲物を逃す筈は無い。
ごく普通に右腕部のショットガンと左腕部のグレネードランチャーを向ける。
内藤とニダーの距離は十メートル程度。
< `∀´>「fire」
ごく普通にロックオン、ごく当たり前に発射、ごく簡単に命中――しない。
< `∀´>「……え?」
内藤が、ニダーの視界から消えている。
空中を散弾とグレネード弾がすっ飛んでいき、やや離れた前方にグレネードが着弾して無意味に爆発する。
ニダーの視界、目標の内藤は消え、路上に残されたのは――まぁるい影。
< `∀´>「上っ!?」
見上げれば、上方から猛然と迫る内藤と二個の円筒。
それをニダーが知覚すると同時、視界を多い尽くす煙と金属片。
思考を走り回るノイズ。
< `∀´>「(ErrorこれはErrorErrorチャフErrorErrorとErrorErrorスモーク!?ErrorError)」
思考を掻き乱され混乱するニダーの耳部集音マイクが、冷たい声を拾った。
( ^ω^)「くたばれ、クズ鉄」

289 じゅういっこめ sage New! 2006/07/12(水) 02:36:07.82 ID:qtF35hmtO
ニダーの前方、煙幕の中から、二本の腕が抜け出てきた。
その内、右手に握られているのは、気違い地味た口径の銃。
一見するとドラム弾倉式のグレネードランチャーに見えなくもないデザイン。
しかしソレは大型拳銃並みにコンパクトで、銃口と弾倉部だけが異様に大きかった。
僅かコンマ数秒で、ニダーがメモリ内データから該当する携行火器を検索。
< `∀´>「(ない?無いわけ……いや、有るわけないニダ!こんな、サイズで――40mm口径なんてっ!!)」
そう、それは最早、携行火器というカテゴリーから完全に外れた代物であった。
その正体は、内藤専用に特注で製作された――対機械兵戦特化銃・無云(ぶうん)。
40mmという馬鹿げた口径で在りながら、単発の使い捨て兵器では無く、
それどころか六発というリボルバー拳銃並の装弾数を誇る。
それでいてサイズは大型拳銃以上アサルトライフル以下。
つまりサブマシンガンか小型のショットガン程度に抑えられていた。
その上、弾丸は榴弾や焼夷弾頭に加え、これらは銃と同じく特注だが――
鉄鋼弾、挙句の果てには成型炸薬弾まで使用可能な怪物銃。
名称は「命中させられたモノは何も云わなくなる=即死」の破壊力に因み、機関長が命名した。
さて、今回内藤が使用したのは――鉄鋼弾。
< `∀´>「グゴッ……!!」
無云が吠えると同時、銃身もとい砲身から飛び出した鉄鋼弾は、
ニダーの装甲である防弾・対爆チタン合金を紙の様に容易くブチ抜き、胸部に直径数cmの風穴を開けた。
< `∀´>「メチャクチャニダ……!!」
視界から消える程の高さで跳躍し、機械兵士の反応を上回る速度で接近し、
挙句には旧式戦車主砲に匹敵する大口径銃を片手で撃った内藤。
これをメチャクチャと言わず何と言うか。

290 じゅうさんこめ sage New! 2006/07/12(水) 02:40:04.94 ID:qtF35hmtO
衝撃で倒れ掛かるニダー、その胸部へ内藤の腕が伸び、即座に引っ込み、
それをニダーが知覚するより早く、内藤は恐ろしい速さで飛び退いた。
何をされたのかわからぬまま、バランスを取れず仰向けに倒れていくニダー。
その視界に、奇妙なモノが映り込んだ。
胸部に開けられた大穴。それを埋める様に突き刺さった、モスグリーンの丸いもの。
< `∀´>「(……しゅっ……手榴弾!!あの一瞬で!?そんなっ――)」


発破。


装甲の内側に埋め込まれた爆弾の破壊力は『ニダー』を『クズ鉄』に変えて、
周囲に爆炎と共にばら撒くには十分すぎた。

内藤はその様子を無言で眺め終えると――踵を返して銃声と悲鳴が響く方へ歩き出した。

291 じゅうよんこめ sage New! 2006/07/12(水) 02:44:01.68 ID:qtF35hmtO
∀´>「……」
奇跡的に頭半分だけが残ったニダーは、その後ろ姿を見詰めて、ふと考えた。
あれは――自分を屠った男は、いったい何者なのか、と。
その答えにニダーが辿り着くのは、極めて簡単だった。

∀´>「あア、ナるhど」
簡単だった。とても容易だった。
∀´>「超大口径のj銃で、装弾数ggが多kて、コnパクト」
その銃がSF映画よろしくオーバーテクノロジーやロステクの産物でないのなら、その性能は何かを犠牲にして成り立った物だ。
破壊力・連射性・取り回し。
それらを備えた上で、複数発の発射が可能な証である六発の弾倉。
それが示すのは、耐久性――つまり強度も有るという事。
では、あの銃は何を犠牲にしたのか?
∀´>「簡……単なこtと……ニダ」
単純な答え。
犠牲にしたのは反動制御。無視したのは使い手の安全。
そんなジャジャ馬を片手で使いこなす奴なんて。
仮にも高性能機である自らを、秒殺してしまう奴なんて。
∀´>「そんな……の……にngん……なわkがない…………ニダ……」
それは解に辿り着いての納得からか、奇妙な満足感を抱きながら、ニダーは停止した。
生物で言う永遠の眠りである。

292 じゅうごこめ らすとー。 sage New! 2006/07/12(水) 02:45:13.38 ID:qtF35hmtO
街中を走り抜けながら、内藤は自身の左膝を見て溜息を吐いた。
( ^ω^)「もう傷を負ってしまった……これじゃあ先が思いやられるお」
内藤の左膝は――爆炎のせいだろう、ズボンが焦げて、皮膚まで焦げて、突き刺さった手榴弾の破片で抉れている。


――――その傷口からは、ただ鈍く光る銀色が覗いていた。
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