615 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/07/09(日) 02:57:35.85 ID:j66pk+IA0
僕は明日東京競馬場へ行く。目的はジャパンカップらしい。
らしいと言うのは、僕が別段競馬に興味を持っていないからだ。
なら何故行くのか?そう思われることだろう。
……僕には一人彼女がいる。とても綺麗だけど、どこか取っ付き難い印象を与える女性だ。
最初は向こうから告白してきた。今まで彼女が出来た事のない僕にとって断る理由がなかった。
付き合い始めの頃は緊張しているものだと思って、どこか距離を取るような性格も気にならなかった。
けど……何ヶ月付き合っても彼女の態度は変わらなかった。いや、むしろ離れていっている気さえした。
だけど僕は……彼女が離れれば離れるほど…どうしようもなく彼女を求めるようになっていった……。

川 ゚ -゚)「……内藤、話があるんだが…。」
( ^ω^)「……なんだお。」

何時もの調子で語りかけるクー。電話越しに伝わる彼女独特の冷たさが、
僕にまだ繋がっている喜びと、これで離れてしまうかもしれない恐怖心を感じさせる。

川 ゚ -゚)「…明日なんだが、暇はあるか?」

付き合い始めてから初めてのことだった。彼女から何処かへ行こうと誘う事があるなんて僕にはにわかには信じられなかった。
けれどこれは紛れもない真実。漫画みたいに自分の頬を引っ張り確認もしてみた。当然のように頬は痛かった。

川 ゚ -゚)「…内藤は競馬に興味があるか?」

616 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/07/09(日) 02:58:05.52 ID:j66pk+IA0
赤いランプが辺りを照らす。一般市民が入って来れないように警官がバリケード代りになる。
私は“内側”の人間だ…捜査一課…殺人を専門とする部署…。
何十年間も同じ事を繰り返す。何十年間も人の死に触れる……。
……また…殺人か…嫌になるが、仕事なのだから仕方がない……。
私は新任の刑事に事情を聞くために、無感動な白線になった被害者の近くによる。

( ゚∀゚)「害者の名前は斉藤またんき。個人で店を開いていたようです。
     特に恨まれるような人物ではなさそうです!」

まだこの仕事に嫌気をさしていない、純真な瞳が私に語りかけてくる。…私も昔はこんなに真っ直ぐだったのだろうか…。

/ ,' 3 「……死因と…それに凶器は…。」
(;゚∀゚)「死因は…ケツから……棒状の物を突っ込まれて内臓を破壊されたようです。」
/ ,' 3 「……棒状の物とは…?」
(;゚∀゚)「えっと…ですね…何と言いますか…。」
/ ,' 3 「………。」

酷い現場だったのだろう。彼はなかなか言い出そうとしない。初めの頃はよくあることだ。

(;゚∀゚)「…ケツ…からですね。あの…海苔…中村海苔が突っ込まれ、それで……。」
/ ,' 3 「………。」

それきり黙りこくってしまう。無理もない…。中村海苔を突っ込んだとなると辺りはくそみそですごい事になっていただろう。
……それにしても…“また”…か…………。
私は疲れたように天を見上げ……少し昔を思い出し…捜査を再開した。

617 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/07/09(日) 02:58:31.07 ID:j66pk+IA0
( ^ω^)「………。」
川 ゚ -゚)「………。」

辺りが少しざわついている。彼氏の贔屓目などではなく、クーは周りの目を引き寄せる美貌の持ち主だった。
僕達は今、東京競馬場へ向かっている。しかし、あった時に挨拶を交わしてから、僕もクーも一言も喋っていない。
……やはり嫌われてしまったのだろうか?心臓がズキリと痛む…。弱気の蟲が僕の心臓を喰い千切る。

川 ゚ -゚)「……あれだ。」
( ^ω^)「………。」

僕は競馬場なんて来たのは初めてなので、これが普通のものより大きいのか小さいのかも分からない。
ただ何と無くでかい建物だなぁ、と思っただけで、特別な感情は湧かなかった。

川 ゚ -゚)「……こっちだ。」
( ^ω^)「………。」

勝手が分からない僕は、クーに連れられるまま会場の中へと連れられる。
テレビなどで見たことのある光景が辺りに広がる。…テレビはつまらなくてすぐにチャンネルを変えたけど、
今日はチャンネルみたいにすぐに切り替わる事はない。

川 ゚ -゚)「…あれが今日の目玉だ。サスガアニジャとサスガオトジャだ。兄弟で人気のある馬で、実力も確かだ。」
( ^ω^)「……へー。」

興味が無かったのでどうしても気のない返事になってしまう。また心臓が痛い。
…気を紛らわすために、僕はその兄弟馬を見る………。

618 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/07/09(日) 02:58:56.95 ID:j66pk+IA0
(# ´_ゝ`)「ブルルル(死ね!一遍死ね!!)!!」
(´<_` #)「ヒヒーン(お前こそ死ね!兄貴面してんじゃねぇよ!!)!!」
(# ´_ゝ`)「ブルルッ(黙れ!てめぇ今日のレースでぜってこかす!ぜってこかす!!)!!」
(´<_` #)「ギュヒィ(うっせ!豆腐の角に頭強打して死ね!!)!!」
(# ´_ゝ`)「バルバルバル(てめぇなんて馬刺しだ!食用だ!)!!」
(´<_` #)「ざわ…ざわ…ざわ…(消えろ!この三流馬!誰もお前なんて見てねぇよ!)!!」
(# ´_ゝ`)「ぐにゃ〜〜(てめぇは誰も賭けてねんだよ!邪魔だから死ね!)!!」
(´<_` #)「ぬわーーー(お前は地球にとって害悪だからさっさと死んでくださいぃ〜!!)!!」

(*゚ー゚)「何か…今日は二頭ともいやに元気ですね…。」
( ><)「きっと大事な一戦の前で気合が入ってるんです!!」
(*゚ー゚)「…でも…何か人語喋ってるような…。」
( ><)「馬は頭がいいからそれくらい可能です!!」
(*゚ー゚)「そ、そうなんですか?」
( ><)「わかんないです!!」


619 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/07/09(日) 02:59:21.63 ID:j66pk+IA0
試合が始まり、僕達は静かに…本当に静かに試合を見ていた。
周りの観客が騒いでいる中、僕達だけがどこか別の空間にいるようだった。

( ^ω^)「……楽しいかお?」
川 ゚ -゚)「……ああ。」

全然楽しそうじゃなくクーは答える。その心の中は何を考えているのか分からない。
……それでも僕は…君のことが知りたい…僕を知ってもらいたい…。
試合はサスガアニジャとサスガオトジャが他の馬を吹き飛ばしながらで
結局どれもゴールに辿り着かなかった。
無事だったのはこの兄弟馬だけで、他の馬はみんな馬刺しにされて死んだらしい。

「なぁ…あれって。」「……だよなぁ。」「恥ずかしくないのかねぇ…。」

まただ。またクーの美貌を皆が羨ましがっている。
妬み、嫉み、僻み。これらの感情のせいで、クーは理不尽な暴力を受けていた。言葉という鋭い刃物で……

川 ゚ -゚)「……帰るか。」
( ^ω^)「……帰るお。」

それでも…僕は一つだけ聞かなければならなかった。
聞いたら僕達の関係は壊れてしまうかもしれない。
…けれど…僕の好奇心が制止を振り切り…言葉を発した。

620 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/07/09(日) 02:59:51.86 ID:j66pk+IA0
( ^ω^)「……クー。」
川 ゚ -゚)「……なんだ?」

本当にいいのか?言ってしまっていいのか?…言わなければ…このままでいられるじゃないか…。
………でも…もしただの思い過ごしなら…僕達は進めるかもしれない…もっと…前へ!

( ^ω^)「…クーって本当は…………………………男かお?」
川 ゚ -゚)「…何?私が実は男だって…?」
川´・ω・`)「んな訳ねぇだろぶち殺すぞ」

あぁ…僕は開いてはならない禁断の扉を開け放ってしまったようだ。
皆がクーを振り返っていたのは……堂々と女装しているクーが珍しかっただけなんだ。
うふふふふふ………あははははははは………………未来が…真っ暗だよ…母さん

川´・ω・`)「ばれちゃしょうがねぇ。てめぇには今からこいつをケツにぶち込んでもらう。」
(;^ω^)「ちょww入るわけなすww」
川´゚ω゚`)「れっつくそみそ☆」
(;゚ω゚)「あっ、あっ、あっ、…海苔はやめて…中村は……。」

アッー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



/ ,' 3 「……また…コロシか……。」
inserted by FC2 system