439 題:定期券 New! 2006/07/04(火) 19:06:06.65 ID:xSo7rnBIO
駅のホームに向かう階段を、人混みを押しのけながら進む学生が1人・・・

「アッー!!また電車に乗り遅れてしまったお・・・」

ここは東京のド真ん中・・・朝の通勤ラッシュの中で満員の電車に乗り込むのは、そう安易ではない。
たった今、電車に乗れずに置き去りにされた『内藤』もまた、例外ではなかった。

「・・次の電車は・・・10分後かお」

そう言って仕方なしに、ホームの各所に散らばるベンチに腰掛ける。
10分、という時間は非常に短い。だが、そんな短い時間でも『朝の10分』はかなり貴重になってくる。
極めつけに、内藤は朝が苦手だw

乱れた呼吸を整える為、大きなため息をする。同時に、ふと、目の前を女性が横切る。そよ風に運ばれた甘い香りに、内藤は無意識のうちに女性のほうへ視線を向ける。サラサラと風に靡く髪に真っ赤な口紅、OLなのだろうか・・・スーツがとても似合って見えた。
『大和撫子』は言い過ぎかも知れないが、これほどの美人を今までに見たことがなかった。
女性を目で追っていると下で何かが落ちる音がしたので、足元に視線を落とす。

「定期券・・誰のだお・・・?」



441 題:定期券 New! 2006/07/04(火) 19:07:28.50 ID:xSo7rnBIO
その場で少し屈んで定期券を拾い上げる。

「東京駅と・・びっぷ・・・?」

ふと、目に入った駅名。VIP駅なんて聞いたことがない。新しく出来た駅なのだろうか・・・。
ベンチから立ち上がり周りを見渡す。
・・・が、既に先程の女性は見えなくなっていた。次の瞬間、内藤は何を思ったのか、あの女性が歩いていた方向に向かって走り出していた。
脚には自信がある。階段の時より混雑している人混みを掻き分けながら、ひたすらに走り続ける。途中、両手を水平にして走りたかったが、この人混みの中でそれが出来る筈もなく諦めた。
黒髪の長い女性の後ろ姿を、内藤の目が捉えた。

「おねえさーんっ!!!」

駅のホームには似つかわしくない大声を張り上げて必死に走る。目的の女性が立ち止まって振り返ると、内藤はスピードを落とし始めた。

「はぁ・・はあ・・・・」
「・・どうかしたのか?君」

透き通るような声が、内藤の疲れを取り除いていく。膝に手を置いて俯いていた内藤だが、声に導かれるようにゆっくりと顔を上げて落とし物を差し出す。

「・・お姉さん、コレ・・・落としたお・・」
「・・・ん?私の定期券だな。ありがとう、助かったよ」

442 題:定期券 New! 2006/07/04(火) 19:08:34.21 ID:xSo7rnBIO
女性は内藤から定期券を受け取ると、じっと見つめたまま呟いた。

「・・・ブーン・・」
「・・・え?」

内藤は、女性が小声で話す言葉を聞き取れなかった。

「いや・・なんでもないんだ。・・・すまない」

女性は、悲しそうな表情で内藤を見つめる。内藤は、どうしても目を合わせることができなかった。

「やはり・・・この定期券は、君が持っていてくれ」
「・・え?でも、これはお姉さんの・・・」
「気にすることはない。君が持っていたほうがいいんだ」

そう言って、半ば強制的に定期券を押し付けられる。内藤は渋々と定期券を受け取る。

「それでは、私は行く。迷惑を掛けたな・・・」

女性はそれ以上、何も言わずに行ってしまった。
少しして電車に乗り込んだ内藤。揺れる電車の中で、女性から貰った定期券を見つめながら、ほんの少しだけ、どこか懐かしさを感じていた。

443 題:定期券 New! 2006/07/04(火) 19:10:51.48 ID:xSo7rnBIO
――後日談――

今日、僕は夢を見た・・・

とてもとても、幸せな夢・・・遠い過去の・・・・・

そこには、僕と、あの女性と・・・そして・・・・・

( ^ω^)「クー。定期券を忘れたのかお?僕のを使うといいおw」
川 ゚ -゚)「すまないな、ブーン。いつも世話になって・・・」
ξ゚听)ξ「まったく、ブーンはお人好しなんだから」
('A`)「でも、ツンはそんなブーンに惚れたんだろ?」
ξ////)ξ「っっ///」
('A`)「おー熱い熱い」
(´・ω・`)「ドクオ。あんまりからかうと、後でツンさんに殺されるよ?」
('A`)「はいはいわろすわr」

444 題:定期券 New! 2006/07/04(火) 19:12:43.21 ID:xSo7rnBIO
( ^ω^)「クー・・・」
川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」
( ^ω^)「・・・ありがとうだおw」
川 ゚ -゚)「・・いや、気にするな」
ξ゚听)ξ「なによーっ 二人だけで話しするなんてズルいじゃない!!私も混ぜなさいよっ!!!」
(´・ω・`)「ほんとだよね、僕たちだけ蚊帳の外」
('A`)「ま、別にいいんじゃね?」
( ^ω^)「おっおっwwwww」


明日、もう一度駅に行って・・・この定期券を使ってみよう。
この夢の、続きが見たいから・・・・・

fin

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