219 扇風機と二人 New! 2006/07/03(月) 21:27:33.57 ID:efAb6RYaO
六畳半の狭い畳の部屋が二人の世界。
二人はここで愛を育み、喧嘩をし、また仲直りをする。
そして、二人で住み初めてから数度目の夏が来た。

ξ;゚听)ξ「あっついんだけど、この部屋ぁ〜」

二人でも夏の暑さには勝てはしない。
ちなみにこの部屋にはエアコンが無かった。

( ^ω^)「あ゙ぁ゙〜〜〜」

小さい扇風機は彼氏が占領していた。
送風口に顔を近付け昔懐かしい行為をしている。

ξ#゚听)ξ「ちょっと!
こっちにも向けなさいよね!!
ガキみたいな事しないでよ!!」


220 扇風機と二人 New! 2006/07/03(月) 21:28:23.24 ID:efAb6RYaO
無理矢理首を捻られて、ボキボキと悲鳴を上げる扇風機。

(;^ω^)「ちょ、暑いお、溶ける」

ξ;゚听)ξ「私も暑いんだっての!」

二人の間を往復する扇風機の首。
その羽音が突然活動を停止した。

ξ;゚听)ξ(;^ω^)「……へ?」

覆水盆に還らず。
こぼれたミルクを嘆いても無駄だ。
内藤とツンの生活を支えていた扇風機は、唐突に天に召されてしまった。
内藤が指でツンツンしても返事はない。
ただの屍のようだ。


222 扇風機と二人 New! 2006/07/03(月) 21:29:11.40 ID:efAb6RYaO
ξ;゚听)ξ「……どうすんのよ」

(;^ω^)「今すぐ買ってくるお」

そんな金は無い。
ツンにもそれは分かっていた。
だから彼女はうちわを手渡す。

ξー匆)ξ「んー……極楽極楽」

(;^ω^)「僕は地獄だお……。
はい、交替するお」

ξー匆)ξ「もうちょっとー」

膝枕でうちわをパタパタ、三分で交替。
こういう夏の夜の過ごし方も、悪くはない。
貧しいけれど、心は豊かな二人。

――しかし、こんな生活が長く続くはずがない。
二人とも、まだまだ若かったのだ。


223 扇風機と二人 New! 2006/07/03(月) 21:30:03.72 ID:efAb6RYaO
(;^ω^)「ツン……何をしているんだお?」

内藤が買い物袋を取り落とし、特売の卵が黄身をまき散らかした。
茫然自失。

――嘘だ、そんな。

ξ;゚听)ξ「ち、違うのよこれはね……」

白々しい。
隠しても無駄だ。
僕に内緒でこんな、こんな事を。

内藤にはすでに最愛の人の姿など見えていない。
ツンをどかし、そして。

ξ;゚听)ξ「やめてぇっ!」


224 扇風機と二人 New! 2006/07/03(月) 21:31:57.59 ID:efAb6RYaO
( ^ω^)「あ゙ぁ゙〜〜〜。
やっぱりうちわよりせんぷうきだお゙ぉ゙〜〜」

古びた扇風機を引っ掴み、自分の顔を近付ける内藤。
ξ#゚听)ξ「ちょっと!私がゴミ捨て場から拾ってきたんだからね!」

内藤の顔から扇風機を引き剥がすツン。

うちわだけで長い夏を過ごせるほど二人は若くはないが、再び扇風機が壊れる日もそう遠くはないだろう。
願わくば――。

( ^ω^)「今年の夏は保ってほしいお゙ぉ゙〜〜」

ξ#゚听)ξ「だから占領すんなって……」

ボキッ。
鈍い音が狭い部屋に響いた。

(;^ω^)ξ;゚听)ξ「……ボキ?」

終わり


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