454 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:38:09.71 ID:vuSmtvm20
ああ、どうやら、

――本日のニュースをお伝えします。今日の午後、ドクオさん(21)が亡くなっていた事が発覚されました。
――ドクオさんの首には何かで絞めたような跡がついていたようです。詳しい調査は・・ ブツッ

俺は死んでしまったらしい



川 ゚ ー゚)「ドクオ、ご飯だぞ」

(;'A`)「だーかーらっ・・・・ハァ」

ため息も出るもんだ。何度言ったらわかるんだ、この馬鹿姉は。

俺が死んでから、もう3日が経った。
で、なんで俺がいまクー姉の家にいるかと言うと・・・俺にもわからない。
まぁ、気分って奴だ。
理由の一つが、何故かクー姉だけが俺を見れるからだけどな。

('A`)「・・・だーかーら、俺は飯食えないってば」

肉体がなくなって魂だけになってしまった俺は、
食べる事、寝ることが不可能になってしまった。
まぁ、腹も減ってないし、眠たいとも感じないから結構便利なのかもしれない。
瞬間移動まで出来た時は、正直感動した。


455 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:38:37.09 ID:vuSmtvm20
川 ;゚ -゚)「だ、だからと言ってお前だけ何も食わんのは不公平ではないか」

('A`)「大丈夫だって。そういうクー姉こそもっと食えよな」

そして、俺は殺された瞬間の記憶がない。

自分が死んだ時はなんで自分が殺されたのだろう、という疑問でいっぱいだった。
それもそうだ。 自分が誰に、何で殺されたかもわからなかったのだ。
成仏する方法も知らないし、何故かクー姉に会いたくなったので家に向かった。
家に帰ってみるとクー姉は泣いていて、俺は死んでいて。
どうする事もできずにボンヤリと眺めていると、クー姉は俺の方を向いて驚いた顔をした。
そして俺も驚いた。

―――何で、見えるのかと

戸惑いながら、クー姉は俺の名前を呼ぶ。

川  ;-;)「・・・ドクオ?」

クー姉は俺を抱きしめると――と言っても触れないので格好だけだが――また泣いてしまった。
死ぬ前に言えなかったことを全て伝えると、今度は、クー姉は嬉しそうに泣いた。
困ったものだ、家の姉は。

川  ;-;)「・・・もう、本当に私だけのドクオなんだな?」

そして現在に至る。
何事もない平穏な日々だ。


456 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:38:57.89 ID:vuSmtvm20
川 ゚ ー゚)「ドクオ、行ってくる」

('A`)「おー、いってらっしゃい」

いつも通りの時間で、会社に向かうクー姉。
どうやったら、いってらっしゃいの一言でそんな笑顔になれるのかと問い詰めたい。

クー姉がいなくなった家は退屈だ。
喋り相手がいない、俺の姿を見てくれる人がいない。
そして、残ったのはつけっぱなしのテレビだ。
ぼんやりと見てるとやがてニュースが始まった。

('A`)「・・・まだ、か」

俺を殺した犯人は、まだ見つかってないらしい。

誰が、俺を殺したんだろ。
何で、俺を殺したんだろう。
生憎心当たりはまったくないのだ。
考えている内に息が詰まってしまいそうで、俺は外に出てみた。


457 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:39:21.73 ID:vuSmtvm20
生きている時、俺は恋をしていた。
同じバイトをしていて、素直ではないが、とても可愛い人だった。

ξ゚听)ξ「ドクオ、遅いっ!ちゃっちゃとするわよ」

生涯で初めての告白をしたら、
ツンは真っ赤になりながら「嬉しい」と答えてくれた。
そんな、俺の初めての恋人。

行くあてもなく、バイトに行く道のりを歩いてみた。
空は雲ひとつなく、桜が綺麗だ。
そうだ、俺が殺された日もこんなに綺麗な桜が咲いていた。

バイト先の店にはツンはもういなかった。
どうやら辞めたようだ。
会えない寂しさが、会えない虚しさが募る。
こんな事になるくらいなら、もっと大事にしてやればよかったのに。
もっと愛してやればよかったのに。

――バカみたいだ。もう遅いのは分かっている。

('A`)「・・・・・ははっ」

寂しい足取りで家に帰るとクー姉はもう帰ってきていた。


458 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:39:38.82 ID:vuSmtvm20

川 ゚ -゚)「ドクオ、何処に行っていた」

(;'A`)「いや、ちょっと散歩に。・・・クー姉、会社は?」

川 ゚ -゚)「ドクオが心配だから早めに帰ってきた」

またか、

鬱陶しいと感じてしまう。
俺はもう生きている人間でもないから、危ない目に合う心配もないじゃないか。
一体なにが心配だというのだ。

('A`)「大丈夫って、言ってるだろ」

川#゚ -゚)「私の気持ちも知らずに・・・・ドクオは私の隣にだけいればいいのだ!」

(;'A`)「ハァ?何だよそれ?」

大声だして怒るクー姉を久しぶりに見た。
ああ、何かあったのだろうか。



俺が死んでから、クー姉は少し変になった。


460 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:40:05.42 ID:vuSmtvm20
(*'A`)「なぁクー姉。俺、彼女できた」

深夜、眠れない身体になってしまった俺にとっては、夜はとても長く感じる。
今思い返せば、あの頃が一番幸せだった時期。
俺が殺されなかったら、この幸せはもっと続いただろうか。
・・いや、分かっている。分かっているはずなのに、

――涙さえ、出ないのか

('A`)「この身体は不便だな」

思いだせ、馬鹿野郎。俺を殺した奴を。
俺の幸せを奪った奴を

 呪  っ  て  や  る

川 ; -;)「・・・・・ド、クオ・・・・ごめ・・・」

('A`)「!・・・・・クー姉?」

ベットの方を向いてみると、クー姉はまるで自分を庇うような姿勢で寝ていた。
何故、そんなに悲しそうに泣いているんだろう。
何故、そんなに悲しそうに俺の名前を呼んでいるんだろう。

川 ; -;)「ごめん・・・ドク・・・っ・・・」


何故、謝るんだろう。


461 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:40:25.73 ID:vuSmtvm20

朝になって聞いてみると、クー姉は何も覚えてないようだった。

川 ゚ -゚)「・・・・・・」

('A`)「・・・クー姉、いってらっしゃい」

この日を境目に俺とクー姉の会話は段々と減っていった。
と言っても、クー姉が一方的に俺を避けているのだが。

俺達は元々血の繋がった兄弟ではない。
まぁ、あれだ。親が再婚して初めて出来た兄弟だ。
クー姉が10歳、俺が8歳。
幼い頃に出会った俺達だが、何の違和感なく溶け込めたと思う。

(*'A`)「俺、将来クー姉とけっこんする!」

そう誓った幼い頃。ああ、俺のシスコンはこの頃から始まったんだな。
思わず苦笑いしてしまう。


( ;A;)「・・・・・あ・・・れ?」

出ないと思っていた涙が、ぽろぽろと頬に流れる。

( ;A;)「・・・・もぉ・・おれ、耐えれそうに、ねえよぉ・・・」

お願いだ 誰か、俺を救ってくれ

462 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:40:55.66 ID:vuSmtvm20
ξ゚听)ξ「・・・あの、クーさん・・ですよね?」

見覚えのある、一人の女性に声をかけられた。
そう ドクオの、恋人。

川 ゚ -゚)「・・・・そうだが、何か用か?」

仕事に行く途中で、思わずイライラしながら答えると、
彼女は俯いて黙った。

川 ゚ -゚)「用がないのなら、私は先に進ませてもらうぞ」

ξ゚听)ξ「・・・わ、わたし見たんです」
ξ゚听)ξ「・・・・・・・貴方が、ドクオを・・・」

思わず足を止めてしまった。
止めてくれ、止めてくれ お願いだから、その先は言うな――――


ξ゚听)ξ「貴方がドクオを殺したんですね?」


川 ゚ -゚)「・・・・・そうだ。私が、ドクオを殺した」

来る時が来た。
そう悟って、私は目を閉じた。


463 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:41:17.63 ID:vuSmtvm20
ξ゚听)ξ「少しの間、考えてたんです。なんで貴方がドクオを殺したのか」
ξ゚听)ξ「でも理由が思いつかなかったんです。仲の良かった弟を殺す理由が」

一気に喋り終わると、彼女はまたさっきみたいに俯いた。
それが何故か滑稽にみえた。
口元に笑みが広がる。

川 ゚ ー゚)「答えは簡単だ。私がドクオを愛したからだ」

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

川 ゚ ー゚)「ドクオが君に獲られるのを見ていたくなかった」

じわじわと、闇が私を侵食していく音が聞こえる。
全てが可笑しくて仕方がない。

川 ゚ ー゚)「十分な理由にならないかね?」

嗚呼、もう、私は戻ってこれない。

川 ;ー;)「ドクオが愛しくて、愛しくて、堪らなかったんだ」
川 ;-;)「たった一人の弟を、これからも守っていこうと、誓ったんだ・・・なのに」

彼女は一瞬哀れんだ顔をすると、携帯電話を取り出してある番号を押した。
多分、警察に連絡するんだろう。

嗚呼、でもその前に伝えなくては ドクオに


464 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:41:54.27 ID:vuSmtvm20
思わず、その場から駆け出した。
後ろから彼女の私を止める声が聞こえる。
聞こえないフリをして、愛する私の弟の元に走った。

――手遅れになる前に、

玄関の扉を開ける。
いない

部屋を見渡す。
いない

焦りばかりが積もる。
もうこの家には、ドクオはいない。
どこを探せばいいのか、それとも、もう消えてしまったのか
唖然としている内に、ある場所が思い浮かんだ。

私が、ドクオを殺した場所。
桜が綺麗だった場所。

川 ;-;)「ドクオ、お願いだから待っていてくれ」


466 ('A`)ドクオが成仏するようです New! 2006/07/02(日) 00:42:41.92 ID:vuSmtvm20

そう願いながら、到着した場所にドクオはいた。
あの日が脳内に浮かんでくる。
ただ、あの日と一つ違ったところは、桜が全部散り終えた事だろうか。

('A`)「・・・・クー姉」

川;゚ -゚)「はぁっ・・は、ドクオ!」

柔らかく微笑んで私を見つめてくれているドクオ。
今みたいに、ずっと私だけを見つめて欲しかった。

('A`)「クー姉、俺そろそろ成仏できそうなんだ」

そう言いながらも、もう身体は半分消えかかっている。

川;゚ -゚)「聞いてくれ、私がドクオを、私がお前を殺したんだ」
川;゚ -゚)「私はお前を愛しているのに、お前はこっちを向かないから」
川 ;-;)「ドクオ、ごめん・・・ごめんなさい・・」

涙で声が震えて上手く喋れれない。
それでも、必死に叫んだら、
ドクオは笑ったような顔をして、

('A`)「困ったものだ、家の姉は」

と呟いた。


終わり

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