466 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/29(木) 01:27:41.33 ID:c8SCV5cU0
(´・o-o・`)「はぁ……」

公園の鳩は、撒いた食パンのカスを次から次へと啄ばむ。
それは生きる為の行為であるはずなのに、何処か遊戯染みて見えた。
再度袋の中から食パンを千切り、鳩の近くにばら撒く。
さらに増えた食料を必死に食べようとする鳩を見て、子供時代の祭を思い出した。
町内会の人が投げたお菓子を子供達が拾う、町内の小さな祭。
あの頃、子供だった僕は一心不乱にお菓子を拾い集めていた。
食べきれないというのに、拾う行為に熱中していた。
この鳩らも、あの頃の僕と同じなのだろうか。

467 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/29(木) 01:28:51.41 ID:c8SCV5cU0
(*゚ー゚)「あー! あれ、私もやりたい!」

少女が母親の手を引いて、僕の方を指差している。
その母親は少女をなだめようとしているが、少女は我儘を貫こうとしている。
我儘なんて、女子供の特権だ。
僕みたいな中年の男に、それを行使する権利など無かった。
だから、こうしてベンチで時間を潰す羽目になるのだ。
社会は無情で、会社は冷酷だ。
サラリーマンなど、それ等にとっては消耗品に過ぎない。

468 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/29(木) 01:29:36.23 ID:c8SCV5cU0
とん、と足に何かがぶつかる。

('A`) 「おじさーん、それとってー!」

足に当たったのは、サッカーボールだった。
食パンの袋をベンチに置き、ボールを拾って少年に投げる。

('A`) 「ありがとー!」
( ^ω^)「ドクオは下手すぎるお。シュートを打ったら真横に飛ぶなんて柳沢以外ありえないお!」
('A`) 「うっせw 急にボールが来たから、足の内側で蹴ればよかったんだけど外側で蹴っちゃったんだよ!」

こっちに来た子供達は、跳ねるボールを追いかけて行った。

( ^ω^)「それじゃあワールドカップに出るなんて不可能だお! 要修行だお!」
('A`) 「おk、把握した!」

469 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/29(木) 01:30:57.06 ID:c8SCV5cU0
夢に向けて努力をしているのか……
そう考えると、少し儚くなった。
あの頃の僕の夢は何だっただろう。
お菓子を拾い集めていた頃は、どんな未来を夢見ていたんだろう。
大人になるにつれて、僕は夢を諦めて現実と向き合うようになっていた。
いや、諦めたからこそ大人になれたのか。

(´・o-o・`)「夢……かぁ」

野球選手だっただろうか、パイロットだっただろうか。
ありがちな夢を幾つか思い浮かべるが、いまいちしっくり来ない。
色々考えながらコンビニの袋から缶ビールを取り出し、プルタブを開ける。
小気味いい音と共に白い泡が溢れ出る。

470 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/29(木) 01:31:43.34 ID:c8SCV5cU0
(´・o-o・`)「おっ…と」

急いで缶に口をつけ、勝手に出てくる分だけ飲む。
子供の頃はビールが美味しい訳がない、大人は我慢して飲んでいるんだ、なんて思っていたな…
でも、それでもお酒を飲む大人に憧れていた時期もあった。

 そうだ、あの頃はバーを開きたい、なんて思っていたんだ。
テレビの中のバーの店主を格好良い、って思っていたんだった。
いつの間にその夢を忘れていたんだろう。
気付けば、二流企業に就職するも妻には愛想をつかされて、
親権も取られて離婚、そして三十代、そのオチはリストラだ。
金なら幾らでも払うから、もう一度子供に戻りたい、なんて真剣に思ってしまう。
まあ、そんな考え方をする時点で僕はもう、子供とは程遠い位置に立っている訳だが。


471 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/29(木) 01:33:04.72 ID:c8SCV5cU0
 金……?
金で子供に戻りたい、なんて馬鹿げた考えに対して頭がストップをかけた。
この夢は、金さえあれば叶わない夢じゃあないじゃないか。
確かに金の他にも努力と無謀さが必要ではあるが、実現できないほどだろうか。
どうせ仕事も無く、再就職どころか生活のアテも無い人間だ。
なら、こういう自爆行為でもしてみないと現状は変わらないんじゃないのか?
そう考えながらも、既に右手は携帯のボタンを押していた。

(´・o-o・`)「あ、もしもし、ジョルジュかい? 相談があるんだけど…」

その翌月には、小さいながらもちゃんとしたバーが建っていた。
立地条件もあまり良くなかったが、ぽつぽつと常連客も出来始めていた。
デスクワークの為にかけていた眼鏡も外し、くたびれたスーツも脱ぎ捨てた。
今日もまた客が来る。いつものセリフでお出迎えしよう。

(´・ω・`)「ようこそ、バーボンハウスへ」
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