33 ツンのスケッチブック New! 2006/06/30(金) 23:00:42.72 ID:IYvj82v60
ホタルが舞う、はかない夜空には、星ばかり。
風が吹くたび、サラサラと草木が音を立てる。
ここは、人があまり居ない、海の近くにある村。
街灯が所々にしかないので、夜間の外出はする人は皆無。
ツンもまた、その一人だった。

ツンは窓を開け、外を見ながら色鉛筆を走らす。
そう、ツンは風景画を描いていたのだ。
誰のためでもない。誰に褒められたいわけでもない。
ただ、描いてるときが、大好きだった。
嫌な事、寂しい事、悲しい事、腹立たしい事。
すべてが、吹き飛ぶような感覚に陥るからだ。
残念ながら、腕はあまりいいといえないが、味のある絵だった。
・・・風景画を描いているうちに、空は明るくなっていく。
今日も、夜明けを迎えてしまった。
こんな生活は、どれだけ続けているだろうか。
肌荒れも気になってくる。
当然、目も悪くなり、今は度が強い赤縁眼鏡をかけている。

35 ツンのスケッチブック New! 2006/06/30(金) 23:01:06.25 ID:IYvj82v60
村の少し奥の方へ行くと、綺麗な朝日を見られる崖がある。
ツンもその昔、ボーイフレンドと一緒に来たことがある。
その時は、いつの間にか肩に寄り添って寝てしまったので、見てないが・・・。
ツンは、海の向こうから太陽が顔を出す瞬間を、絵に閉じ込めたかった。
スケッチブックと、色鉛筆を持って一人、家を出た。

まだ、肌寒い。
夏だというのに、早朝はまだ肌寒い。
それは、ツンが寒がりというのもあるが、暑くはないのは確かだ。
風を受けるたび、目を瞑る。
眠くは無い。夜の風景を書くために、4時には寝ているのだ。
そして、ようやく崖に着くと、雲は紫色に輝いていた。
そこらへんの、埋め込まれた岩に腰掛け、閉じ込める準備をする。
準備をし終わり、いつでも朝日が登ってもいい状態になった。
・・・と、ほっとしていると、崖の先端に一人の男が立っていた。
今にも、飛び降りてしまいそうな感じだった。
ツンは、そんな事を察せずに、ただ不思議に思った。

36 ツンのスケッチブック New! 2006/06/30(金) 23:01:32.95 ID:IYvj82v60
ξ゚听)ξ「・・・どうしたんですか?」
思わず、問いかけた。
男はハッと気づき、振り向く。
だらしの無い服装だ。そして、ボサボサの髪の毛。
・・・しかし、人の事を言えないか、とツンは思った。
( ^ω^)「・・・お、お嬢さんこそ、何をするんだお・・・?」
ξ゚听)ξ「私は、ここの崖から見る朝日を描きたくて・・・。」
( ^ω^)「そうかお・・・。」
ξ゚听)ξ「・・・疲れた顔ですね・・・。」
( ^ω^)「お嬢さんも、疲れたような顔だお?」
ξ゚听)ξ「私は・・・元からこんな顔立ちですけど・・・。」
ツンは、一息入れた。
ξ゚听)ξ「それ、スーツですか?この近くに会社なんか無いですけど・・・。」
(;^ω^)「あ・・・こ、これは・・・。」
そういうと、男はうつむいた。
ツンは、腕時計を見た。
今の時刻は4時5分。まだ十分に時間はある。
そして、言いづらそうに男はこういった。
( ^ω^)「あのね・・・、お嬢さん。僕は死のうとしてたんだお。」
ツンは驚いた顔をした。
ξ;゚听)ξ「ど、どうしてですか!?」
( ^ω^)「もう、会社も私生活も疲れたんだお・・・。」
男の目は力がなかった。
正に、しょげかえっていた。
少々、吹っ切れたのか、荒々しい口調になってきた。
( ´ω`)「後輩も先輩も・・・俺を邪魔者扱いするんだお・・・。」
ツンは一人暮らしだったが、その辛さは何となく分かる気がした。
ξ゚听)ξ「・・・だから、死ぬんですか・・・?」
( ^ω^)「そうだお。どうかしたかお?」

37 ツンのスケッチブック New! 2006/06/30(金) 23:01:59.97 ID:IYvj82v60
ξ゚听)ξ「あの・・・私に、止める権力は無いと思いますが・・・死ぬのは、止めてください・・・。」
( ^ω^)「どうしてだお?」
ξ゚听)ξ「そ、そんなの・・・。」
ツンはうつむいた。
(#^ω^)「・・・今、死ななきゃ俺はどうなるんだお!」
いきなり、男は叫ぶ。
ツンは涙が溢れそうだった。
が、堪えてこう小さな声で言った。
ξ゚听)ξ「・・・死んで実る人間は居ませんよ・・・。」
(#^ω^)「俺は生きていても、生きていても・・・実りはしないんだお!」
ξ゚听)ξ「そ、そんなの、この先分からないじゃないですか!」
(#^ω^)「もう、辛いんだお!」
男は、これ以上に無い叫び声をあげた。
しかし、ツンは動じなかった。
ξ゚听)ξ「け・・・結局、逃げるんじゃないですか!何、悲劇のヒーロー気取ってるんですか!?
どんなに落ちぶれたって、どんなに傷つけられたって・・・人を傷つけてまで、自分だけが楽になりたいんですか?。」
(#^ω^)「どうせ、俺なんか死んでも、誰も悲しまないお!」

38 ツンのスケッチブック New! 2006/06/30(金) 23:02:25.40 ID:IYvj82v60
ξ゚听)ξ「家族はどうなんですか・・・?」
( ^ω^)「か、家族は・・・。」
男は、今までの威勢が嘘のように、またうつむいた。
ξ゚听)ξ「あなたが逃げても、奥さんやお子さんの負担が大きくなるだけですよ?」
( ´ω`)「・・・。」
男はまだ下を向いている。
( ´ω`)「・・・娘は、今年で小学校1年生か・・・。」
ξ゚听)ξ「・・・まだ、両親の助けが必要なんじゃないんですか?」
( ´ω`)「そう・・・かもしれないお・・・。」
ξ゚听)ξ「だったら・・・、自分だけ逃げるのはずるいですよ。」
( ;ω;)「・・・。」
男はひざまずき、大きな声で泣き喚いた。
それを制止するかのように、ツンは肩を叩き、
ξ゚听)ξ「ほら、見てください。綺麗な朝日ですよ。」
ツンが指差す先には、真っ赤な半分の太陽があった。
ξ゚ー゚)ξ「世界は・・・こんなにも美しいんです。だから、死ぬなんていわないで・・・頑張りましょうよ。」
そう言って、私は荷物を持ち、家へ帰った。

39 ツンのスケッチブック New! 2006/06/30(金) 23:02:56.50 ID:IYvj82v60
家に帰り、ふうっと一息入れて、ベッドに倒れこむ。
ξ゚听)ξ「・・・あ、今日も描くの忘れてた・・・。」
そう。いつも、周りのものに気をとられて描けないのだ。
鳥が怪我をしていたり、カブトムシが木に張り付いてたり、綺麗なガラスが落ちていたり・・・など。
記憶には焼き付けられているが、実物を見て描きたいのであった・・・。
ξ゚听)ξ「・・・ま、しょうがないか・・・。明日も、日が昇るだろうし・・・。」
楽天的なことを思い、スケッチブックを元の場所にしまった。
ξ;゚听)ξ「うぅ・・・さっき、大声出したからお腹すいちゃった・・・。」
そう言って、ツンは朝食の準備を始めた。
空は、見事な朝焼けだった。

-END-

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