789 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:41:44.87 ID:BHzDy/USO
12cm
それは短いようで長く、時にそれは人を苦しめ惑わせる。

( ^ω^)「あとちょっと、あとちょっとだお。」

何があとちょっとなのか?
あとちょっとで何かが見えそうなのか?
あとちょっとで何かを入れられそうなのか?
答えはNO。断じてNOだ。
ブーンは掴みとろうとしていたのだ。
何を?
希望? 栄光? 勝利? 平和?
そんな高尚なものでは決してない。
ブーンは鉄の塊の下に潜り込んだ銀色の塊を掴もうとしていたのだ。
そう、誰もが一度は経験したことがあるであろう、あれだ。


791 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:43:44.37 ID:BHzDy/USO
時を遡ること5分

夏の日差しは大地を焼くかのように降り注ぎ、全てのものに渇きをもたらしていた。
そして、ブーンも当然、その全てに含まれていた。

( ^ω^)「暑いお〜。溶けてしまいそうだお〜。」

一つの球体、もとい一人の(余分に栄養を貯めすぎた)青年がそう呟く。
この体型で夏の昼に外に出るのは苦行に等しいものである。
では何故、ブーンは外にいるのだろうか。
答えは簡単。
モテたいからだ。
小麦色の肌、筋骨隆々とした体。
ブーンはこれさえあればモテると考えていた。だから、夏休み初日から外にいるのだ。


793 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:45:37.78 ID:BHzDy/USO
しかし、それは恐ろしく甘い考えであった。
今まで、使っていなかった筋肉は走りこみを始めると、ウルトラマンもビックリの
たった2分で悲鳴をあげ、家から100m離れた所でブーンは自分の甘さを知ることになった。

( ^ω^)「のどが渇いたお〜。何か飲み物をだお〜。」

そう言いながら足を引きずるブーンの目にある物が飛込んできた。

( ^ω^)「自動販売機だお。」

そう言うとブーンは自動販売機にヨロヨロと近付いていく。



795 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:48:06.90 ID:BHzDy/USO

( ^ω^)「120円かお。お金、お金。」
そう言いながら、ブーンは自分のポケットに手を突っ込み、あるだけを取り出す。
銀色の塊が一つに銅色の塊が二つ。丁度だ。

( ^ω^)「何を買おうかお。」

そう言ってブーンは10円を自動販売機入れていく。
10・・・・20・・・・と数字が表示されていく。
そして、100円を入れようとしたその時。
そう、その時だった。
ブーンの手から100円が逃げるように地面に落ち、そして、自販機の下に転がっていったのだ。

799 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:51:02.62 ID:BHzDy/USO
( ^ω^)「これはマズいお。何とかして拾うお。」

そうして、冒頭部に至るわけである。

ブーンの手から銀色までの距離は約12cm、頑張れば届きそうであるが
すでにブーンの太い腕は自販機と地面の間で限界をむかえている。
それに加え、夏の日差しは序々にブーンの体力を奪ってゆき、ブーンは
いろんな箇所が限界を迎えつつあった。



802 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:52:41.99 ID:BHzDy/USO

( ^ω^)「暑いお。ボーッとしてきたお。」

チンチンブルブルランランラン

( ^ω^)「幻聴も聴こえてきたお。」

チンチンブルブルランランラン

( ^ω^)「ああ、もう駄目だお。」

そうして、ブーンが銀色の回収と生きることを諦めようとしていた時であった。

(`・ω・´)「チンチンブルブルラ・・・・・・やぁ、少年!何をやっているんだい?」

806 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:54:20.07 ID:BHzDy/USO
( ^ω^)「ちょっと自販機の下の100円を・・・・・」

そうブーンが言った途端、その男はブーンを引っこ抜きアッと言う間に
100円を自販機の下から取り出してしまった。

(`・ω・´)「少年が取ろうとしていたのはこれかな?」

そう言ってその男は100円を手の平に乗せ、ブーンに差し出す。

( ^ω^)「あ、ありがとうございますだお。(何だお。この人?)」

ブーンは100円を受取り、飲み物を買うことすら忘れて呆然としていると、
男が小さな声でこう呟いてきた。

(`・ω・´)「見返りを要求するのも何だが少年、良い下半身してるね。」

( ^ω^)「ま、まさか、そっちの人かお?」

ブーンが震えながら聞くと、男は得意気な表情で答える。

(`・ω・´)「そう、そっちの人だ。」


終わり ではない

813 ( ^ω^)が掴み取るようです。 New! 2006/06/30(金) 00:58:11.42 ID:BHzDy/USO
歓声が響く。
それと同時にゴールネットが揺れる。

そして、得点を決めたであろう選手が両手を広げ、フィールドを駆け回る。

(`・ω・´)「まさか、素質はあると思っていたが、あの少年が国を背負うことになるとはなあ。あの時スカウトしといて良かったよ。」

そう日本代表監督のシャキンが呟く。
ブーンはサッカー日本代表となっていたのだ。

些細な変化が未来を変える。
外に出ようと思わなかったら、
ブーンはきっと歓声を浴びるなんてことはなかっただろう。
これを読んでいる貴方も明日から何か些細なことでも変えてみてはいかがだろうか。
その些細な変化が貴方の未来を薔薇色にするかもしれない。


終わり

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