469 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 06:57:12.50 ID:lLqZESYzO
ここはVIP食堂。
周りを高層ビルやマンション等に囲まれ、都会の片隅にひっそりと佇んでいる。


( ^ω^)「いらっしゃいだおー」

店に入るなり威勢の良い声が響く。

店主の名はブーン。
先代から始めたこの店の看板を受け継ぎ、まだ2年も満たない。

それでも父親から譲り受けた愛嬌と料理の味の良さは確かであり、この店はいつも常連客から一見さんで賑わっている。

470 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 06:59:36.86 ID:lLqZESYzO
('A`)「オヤジ、いつもの」

(;^ω^)「ちょwwwブーンはまだオヤジじゃないって何回言ったら…まぁ良いお…
樹海定食一つだおね」

ドクオはこの店の常連客の一人である。
近くのCDショップで働いているようで、毎日のように休憩時間になるとここに訪れ食事する。
今風の若者であり、ブーンともあまり年差は無いが古びたこの食堂には到底合う感じでは無い。

が、ドクオはこの店が好きだった。


('A`)「マヨネーズ、キモいぐらいかけてね」

( ^ω^)「あいおっ。
ドクオは樹海定食ホントに好きだお」

(*'A`)「いやぁ…ブロッコリーのあの鬱蒼とした感じとか、日本でも一部でしか食べられないはずのサボテンステーキとかマジヤベェもん」

( ^ω^)(…サボテンステーキなんてマズくて誰も食べないお)

471 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 07:02:12.65 ID:lLqZESYzO
フライパンの上でステーキ用にカットされたサボテンがジューっと小気味良い音を立て徐々に焼けてゆく。
ドクオはそれをいつも待ちきれない様子で楽しそうに眺めるのだ。

( ^ω^)「若いのにいっつもここに来るなんてドクオは相当の変わりもんだお」

('A`)「俺、ファーストフードとか定食屋とか嫌いなんだよ」

( ^ω^)「だからって彼女まで連れて来るのはちょっといただけないおw」

('A`)「アイツ(*゚ー゚)は変わりもんだから良いの。
ここ気に入ってたし、また連れて来るよ」

( ^ω^)「毎度ありがたいけど素直に喜べないお…」

仕上げは味噌汁に大量のワカメを入れて(ぶち込んで)樹海定食をドクオに差し出す。

(*'A`)「待ってましたー!!」

ドクオは一度口にすると食べ終わるまで絶対喋ってこない。

美味しそうに食べるその姿がブーンにとって何よりの喜びだった。

(*'A`)「固って!!サボテン固って!!ちょwww糸引いてるよwwwwwウヒヒヒヒwwwww」

(;^ω^)(テラキモス)

472 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 07:05:34.58 ID:lLqZESYzO
(´・ω・`)「やぁ、ブーン。今日もいつもの頼むよ」

彼の名はショボン。
彼も同じくブーンやドクオと年の差は無く、今時の若者であるが、非常に落ち着きがあり独特の雰囲気を持った青年だった。

( ^ω^)「らっしゃいだおー。
バーボン定食一丁だおね」


3人はこの店で知り合った仲であり、ドクオとショボンもまた常連仲間だった。

(*´・ω・`)「あ、ドクオだ。ハムハムしてる、ドクオ、サボテンハムハムしてる」

うん、ショボンはウホなんだ。すまない。

(*'A`)「ヤベー!!味噌汁なのにワカメで汁が見えねーwww」

ドクオは隣に座ったショボンにも気付かず樹海定食を貪っている。

(´・ω・`)「チッ。まぁ食い終わるまでお触りは無しにしとこう」


この二人は毎日こんな感じである。

473 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 07:12:33.50 ID:lLqZESYzO
ブーンの手元から勢い良く火が上がる。

バーボン定食は名の通り、バーボンを使った定食である。

見た目はただの焼き野菜もバーボンの後味が色濃く残り、
見た目はただの焼き肉もバーボンの後味が色濃く残る。

特製味噌汁にはバーボンが数滴注がれる。

ちなみに好みで食後にカカオ99%も付くが、今までショボン以外頼んだ者はいない。
と言うより、バーボン定食自体ショボンしか頼まない。

( ^ω^)「へい、おまちだお!」

(´・ω・`)「ありがとう」

定食を差し出されたショボンの顔もまた目を輝かせ嬉しそうに笑みをこぼす。

ちょっと変わってるとはいえ、やはりお客さんの喜ぶ顔はブーンにとって何よりの励みだった。

474 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 07:14:08.01 ID:lLqZESYzO
と、その時…

『ガラララッッ!!!!』

勢い良く店の扉が開かれ、一人の女性が入ってきた。

あまりの音で、一心不乱に定食を貪っていたドクオとショボンもそちらに目をやる。


そこには若い女性が立っているが、それは大層な美貌の持ち主である。
彼女は眉間にシワを寄せ、鬱陶しそうに回りを見渡し口を開いた。


ξ゚听)ξ「…いきなりだけどここの立ち退きを頼みに来たわ」



;^ω^);'A`);´・ω・`)「な、なんだって━━━━━━━━━━━━━━━!!!!!!!111!!!!」

718 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 22:52:15.94 ID:lLqZESYzO
(#'A`)「姉ちゃん、入って来るなり何言ってやがんだ…」

ドクオは席を立ち上がり、押し殺した声をゆっくり吐く。

ξ゚听)ξ「気に障ったんなら御免なさい。
アメリカでの生活が長かったから、日本人みたいに回りくどい言い方嫌いなの…」

(#'A`)「あぁん?何がアメリカだ。
ジャパニーズパンクス、ナメんじゃねぇぞ」

ξ゚听)ξ「それよりアナタ、口から糸引いてるわよ」

(*'A`)「あっ★」

(;^ω^)(サボテンかお…)

(*´・ω・`)「ウッ★」

(;^ω^)(こんな時に勃てんなお…)

719 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 22:54:24.79 ID:lLqZESYzO
(;^ω^)「あのー…僕がここの店主ですが、そういったお話は一切お断りさせて頂いているんですお」

話を聞いたか聞かずか、女は一枚の紙を差し出した。

ξ゚听)ξ「内藤さん、ここの土地、まだアナタのものではありませんね?」

(;'A`)「何ィッ!?」

(;´・ω・`)「本当かい!?ブーン!!」

(;^ω^)「…アウアウ…」

ξ゚听)ξ「お二人には残念ですが、これは権利証書のコピーですが…ここにある通り、これは真実なのです」

720 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 22:57:38.26 ID:lLqZESYzO
(;^ω^)「た…確かに、ここは荒巻会の会長さんからお借りさせてもらっている土地で…」

ξ゚听)ξ「この度、荒巻会の所有する土地の一部を、我が長岡コンツェルンが買い取らせて頂く方向で話が進んでいます」

(;´・ω・`)「…何でまた」

(;^ω^)「巨大ビルだお」

;'A`);´・ω・`)「な、なn(ry」

ξ゚听)ξ「その通り。
六本木ヒルズ、表参道ヒルズに続き、この度ジョルジュヒルズ建設のためこの一体の土地全て長岡コンツェルン所有のものとなる予定です」

721 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 22:58:43.55 ID:lLqZESYzO
(;'A`)「ジョルジュヒリュ…言い難いな!!オイ!!」

ξ゚听)ξ「いずれ慣れます、私みたいに」

(;^ω^)「…噂には聞いてたお…」


ブーンが思い出していたのは数週間前の昼食時のことだった。

722 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:02:41.49 ID:lLqZESYzO
( ´_ゝ`)「うちも結局立ち退く方向に決まりそうだよ」

(´<_` )「やはり兄者のとこもか。
今や押しも押されぬ長岡コンツェルンだからな。
まぁ食い扶持には困らずに済むし悪くはないか…」

( ´_ゝ`)「あぁ、それに今までに無い大きなビルだそうだ。
あらゆる事業を更に展開するだろうし、ここら一帯は長岡の傘下に入ることは間違いないな」


――――…

(;^ω^)「そんな話を近所の会社に勤める常連さんが言ってたお…」

723 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:04:36.02 ID:lLqZESYzO
ξ゚听)ξ「話が早く済みそうで何よりです。
立ち退き料は勿論、ジョルジュヒルズでは昭和テイストな大衆食堂も設ける予定でして、よろしければそちらで…」

(;^ω^)「…すみませんが…僕は小心者なので急に話を決めることはできないお。
時間を頂けますかお?」

女は小さく溜め息を吐くと、それまで通りの無表情な顔で

ξ゚听)ξ「分かりました。近々お返事を頂ければ結構ですので。
遅れ馳せながらこちらは私の名刺です。考えがまとまり次第御連絡下さい」

と、適当な挨拶をして出て行ってしまった。
ドクオとショボンは呆気に取られしばらく女が出て行った扉を眺めていた。

724 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:06:05.77 ID:lLqZESYzO
('A`)「何だ、あのアマ。淡々としやがってムカつく女だったな」

(´・ω・`)「まぁ…天下の長岡コンツェルンに勤めるぐらいだから、プライドが物凄いんだろうね」

('A`)「チッ。せっかくのサボテンステーキが冷めちまったじゃねぇか」

(´・ω・`)「僕のバーボン定食もすっかりアルコールが抜けちゃったみたいだ…」

女が去ったきり、ブーンは二人に背を向け黙ったまま何かをしている様子だったが、

( ^ω^)「関係ない二人を気分悪くさせて正直すまんかったお。
これはせめてものお詫びだお」

二人の間に大盛りのキャベツと揚げたてのトンカツを差し出した。


(´・ω・`)「…ブーン…」

725 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:09:17.00 ID:lLqZESYzO
その後もブーンはいつも通り営業し続け、なるべくあのことを考えないように明るく振る舞っていた。


暖簾を下ろす頃には陽もすっかり暮れるが、これでブーンの一日が終わるというわけではない。
この後も伝票計算に料理の下ごしらえ等、しなければいけないことは山程ある。

しかし、やはり気分が優れるはずもなく今一つ次に行動を移せない。

ブーンは薄暗い店内のカウンターに座り、昼間にあの女性からもらった名刺を眺めていた。

囁くように吐き出した一言…


( ^ω^)「…彼女はやっぱり…ツンだお…」


その言葉は古びた木目の床にシミになることもなくこぼれ落ち、消えた。

726 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:11:50.29 ID:lLqZESYzO
月日は20年程遡る。



ブーンはまだ5歳になったばかりの幼稚園児である。
当時から活発な男の子で、両手を翼の様に大きく広げて走る姿から、皆は本名の内藤ホライゾンではなくブーンと呼んだ。

明るい性格とその笑顔からブーンは園内の人気者だった。

729 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:20:34.30 ID:lLqZESYzO
⊂二( ^ω^)⊃「ステルス機ごっこするおーwww」

ξ*゚∀゚)ξ「ブーン!ブーン!」

⊂二( ^ω^)⊃「今から僕以外の皆は敵国と見なすおーwww
10秒数える間に逃げるおーwいーち…」

ξ*゚∀゚)ξ「ブーン!」

⊂二( ^ω^)⊃「さーん…」

ξ*゚-゚)ξ「ブーン…」

⊂二( ^ω^)⊃「ごー…」

ξ* - )ξ「……」

Σ(゚ω゚;)「ろー…くぉッ…!!」

ゴスッッという鈍い音と共にブーンが跪く…

735 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:23:26.06 ID:lLqZESYzO
ξ*゚∀゚)ξ「ブーン、遊ぼー」

刹那、少女の拳がブーンに突き刺さったかと思うと、次の瞬間には天使の様な笑顔で少女がブーンに微笑みかける。


(;゚ω゚)「…ツ…ツン…
リバーブローは…ダメだ…お…」

( =ω=)ガクッ……


ブーンは死線を越えそうになることがたまにあったが、ツンとブーン、二人は仲良しだった。

739 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:26:29.35 ID:lLqZESYzO
ξ*゚д゚)ξ「今日ね…?ブーンのお家行って良い?」

幼稚園の帰り道、二人は手を繋ぎ、ツンがブーンに首を傾げて尋ねる。

( ^ω^)「良いおー。どうせならうちでご飯食べてけば良いお」

ξ*゚∀゚)ξ「やったぁ★ブーンのお家のご飯大好き!」

( ^ω^)「トーチャンとカーチャンの作るご飯は世界一美味いお!!」


二人にとってこういう日常がいつも通りのことだった。
両親が共働きで鍵っ子のツンはブーンの家に度々訪れ、夜遅くに母親が迎えに来ることが多く、
ブーンの両親はそれを拒むこともなく「娘ができたみたいで嬉しい」と優しく見守っていた。

741 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:29:06.24 ID:lLqZESYzO
そんな毎日が続くと思っていたある日、ツンはブーンの前からいなくなってしまった。

当時は理由がよく分からなかったが、ツンの父親の海外転勤が決まり、一家ごとアメリカに引っ越したのだと後に知った。


ξ;;)ξ「ブーン…ブーン…」

寂しそうにブーンの手をギュッと握り、その瞳から大粒の涙をこぼすツン。

それを見ていると泣きそうになるブーンだったがどうにか笑顔を作り、明るくツンを送り出した。

743 ( ^ω^)ブーンの愉快な大衆食堂 New! 2006/06/23(金) 23:30:49.63 ID:lLqZESYzO
( ^ω^)「ツンが帰って来たら、ブーンがツンの大好きな……作るお!!
絶対美味しいの作るって約束するお!
だから泣かないで、また会えるのをwktkして楽しみにしてるお!!」

ξ;;)ξ「………」

ξう;)ξ「うん…」

ξ*゚∀゚)ξ「約束だからね、約束!」


そして二人は指きりをしたのを最後に、20年後の今日まで再会することはなかった。



( ^ω^)「…ツンが好きなものって何だったお…?」

肝心なことが思い出せないブーンは小さく唸ると、仕方なく伝票計算を始めた。

inserted by FC2 system