760 358 sage New! 2006/06/27(火) 00:25:18.28 ID:84cAShDm0

―時代も定かではない程昔、燃え盛る屋敷の何処かの部屋―
どうやら逃げ遅れたらしい、一組の男女が会話をしているようだ。

ξ゚听)ξ「ねぇ、ブーン。アンタ、輪廻転生って信じる?」
女性は男の方を『ブーン』と呼んだ。それが男の名前だろうか。
ブーンは既に足を倒れた柱に挟まれているらしい。仰向けに倒れている。
(;^ω^)「何いってるお、ツン!そんな事言ってないで君は速く逃げるお!」
女の方は『ツン』と言うらしい。内藤には豪く不釣合いな程の美貌を持っている。

ξ゚听)ξ「殆ど無駄よ。周りは火の海の上崩れて来てる。逃げようとしてももう…助からないでしょうね。」
(;^ω^)「で、でも…」
ブーンは言葉に詰まる。ツンが出鱈目を言っている訳ではない。事実、周りを見ても火の海。
この部屋も既に崩れて来ていて、燃えた柱が出口を防いでいるのだ。
ξ゚听)ξ「だからね、ブーン。ちょっと聞いて。」
( ^ω^)「…なんだお。」
もう言っても無駄だと割り切ったのだろうか。ツンの話に耳を傾ける。


761 358 sage New! 2006/06/27(火) 00:25:51.26 ID:84cAShDm0
ξ゚听)ξ「さっきも言ったけどアンタ、輪廻転生って信じる?」

―六道輪廻、そして転生。一般的には輪廻転生と言われている。
この世に生を受けた生命は死後、生前の罪により、地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道の
6つのいずれかに転生し、これら六道で生死を繰り返す。

( ^ω^)「どうだろうお…転生なんて考えた事も無かったお。」
ξ゚听)ξ「なら、今からでいいわ。信じなさい。」
( ^ω^)「ちょwwww今からってwwwwww」

ξ#゚听)ξ「うるさいわね、信じる者は救われるって言うでしょ!?」
(;^ω^)「は、はい!信じますお!」
ツンは怒ると余程怖いのだろうか、言葉が無意識の内に敬語になっている。

762 358 sage New! 2006/06/27(火) 00:26:12.41 ID:84cAShDm0
ξ゚听)ξ「いい?私は…もっと一緒に生きたかった。だから…私も必ず転生して見せるから、
      アンタも絶対転生するのよ、いい?」
( ^ω^)「それはとても夢のある話だおw でも生きたいなら何で逃げないんだお?」
ξ///)ξ「そ、それは…私はアンタと死ぬなら別に…」
(*^ω^)「お…」
火の所為かは定かではないが、二人の顔が高潮する。

ξ*゚听)ξ「だ、だからアンタも転生して、また私と一緒に―

―ツンが何かを言いかけた時、燃え盛る柱が二人を隔てた。
翌朝、火の消えた屋敷の中には二人分の亡骸があった。

 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

―場面は変わり現代。
大雪の降り注ぐ駅のホームのベンチに一人の男が腰を下ろしていた。
(;^ω^)「おー…相変わらず日本の冬は寒いお。でも確かロシアの冬はもっと寒かった気がするお。」
『相変わらず』。その言葉は既に5回目の転生をしたブーンだからこそ言える言葉だった。
5回とは言っても人間だけで数えると5回、と言う意味なのだが。

763 358 sage New! 2006/06/27(火) 00:26:46.45 ID:84cAShDm0
最初はエジプトにてファーティマ朝第6代カリフのハーキムがカイロの東方モカッタムの丘で行方不明となり、
暗殺説が流れるのを聞いたり。

アメリカでコロンブスと共に出航してみたり。

スペインでフェルナンド1世が没し、アルフォンソ5世が即位するのを喜んでみたり。

最後はロシアでオスマン帝国とロシアがヤーシ条約を結び、
第2次ロシア・トルコ戦争が終結するのを聞いて安堵の息を漏らしたり。

でもツンとの約束を、転生するのを信じ、転生したブーンだったが、全ての人生においてツンと出会うことは無かった。

( ^ω^)「やっぱり…もう出会えないのかお…。…お?」
―ベンチに近づく足音が聞こえる。

足音がベンチの後ろで止まり、ベンチが軋む音が聞こえた。
「大雪警報出てましたから、電車来ないかもしれませんね。」
女性の声だ。周りに人は誰もいない。ブーンに話しかけてるのだろうか。
( ^ω^)「え?警報も出てるんですかお…電車来ないと帰れないですおw」

「約束…覚えてる?」
(  ω )「忘れる訳無いお…何世紀経っても…忘れなかったお」
「ずっと、探してたんだから…会いたかったんだからね?馬鹿…」
―もう…ずっと一緒だよ、ツン。


ξ゚听)ξと( ^ω^)が約束を果たすようです 終
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