902 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/27(火) 16:56:34.81 ID:x2T4vIui0
インスタントカレーヌードル。三日目。

( ^ω^)「…いただきますだお」

誰に言うでもなく無言ですする、寂しいワンルームの昼下がり。
遅い昼飯兼朝飯。冷蔵庫はほぼ空。すぐそこの棚に少々のカップ麺が備蓄されているだけ。
飽きるよなぁ。もう仕送りが尽きて2週間カップ麺しか食ってないや。

ずずっ、ちゅるるっ、ぴちゃっ、ごくん。

淡々と、嚥下する。ゆっくり噛みながら、それでも早めに血圧をあげたいからそれなりに急いで掻き込む。
お湯が熱すぎて火傷するかと思ったけれど、どうしようもない。
部屋にあるのは必要最低限の家具だけ。パソコンなんて高尚なものがあっても電気が止まっている。
…そこでふと、最後に出た買出しのときを思い出した。

903 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします カレーヌードル三日目、ね。それ以外にもチキンラーメンとかいろいろ食ってます New! 2006/06/27(火) 17:06:25.90 ID:x2T4vIui0
(´・ω・`と9m もっとお米を食べようよ m9っ`・ω・´)

そんな広告が目に留まった。
お米か…。確かに、ご飯は好きだ。
母ちゃんが釜で炊くご飯は暖かくほんのり甘い。時々こがすけど、おこげもまた香ばしくて涙が出そうなほど、美味い。
しかも母ちゃんは炊飯だけではなくおかずに関しても達人だ。
丼物にするときは肉汁を引き出すために味醂を使い、ご飯は硬めに炊いて水分を吸収させやすくする。
やわめのご飯は甘さを引き出し、塩気が多い食べ物の辛さを中和させる。
レパートリーの多さに感動する。いつかこんな自炊が出来ればいいな、と思う。

( ^ω^)「…ははは、僕は、生活能力ないし、炊飯器使っても、予約スイッチと炊飯スイッチが見分けられないお」

料理も出来ない。かといって、食材を購入するための資金も稼げない。
駄目人間だ。駄目人間だ。変わらなきゃいけない。けれど何も出来ない。
そんな時に、よく母ちゃんのご飯を思い出す。

とてもとても、おいしかったなぁって。

少しだけ頑張ろうと思った。
実家に父ちゃん一人残して上京したけど、こっちからお返しを出来るほどは稼げない。
家賃も時々赤字だ。
だから、がんばらなきゃ。

ねぇ、母ちゃん。そこから見てるかお?
ブーンの舌は、母ちゃんの味を忘れないお。
もう一度、ブーンが母ちゃんの味をこの世に顕現させてみせるお。
だから、そっちからずっと、見守っていてほしいお。
絶対だお? 約束だお?

904 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/27(火) 17:13:21.44 ID:x2T4vIui0
カップ麺の捨てられたゴミ箱、稼動してない冷蔵庫。
冷蔵庫の側面には、たった一枚の紙切れがマグネットでとめられている。

ご飯の炊き方、と銘打たれた一枚のメモ帳が。

開け放たれた窓の外。笑顔の少年が駆け抜けていく。



ここだけの話だが。
彼は数ヶ月にちょっとした雑誌に紹介された事がきっかけで有名になっていく。
牛丼屋でアルバイトを始めた彼の炊くご飯を使った牛丼がおいしいと評判になったから。
プラスチック製のどんぶりにはもったいない、母の味を思い出させる暖かいご飯。
硬めに炊かれたご飯は肉汁をたっぷりと吸い上げ、店の客たちを唸らせる。
いつしか定食屋を開いた彼は、空にむかってにっこりと笑うのだ。

抜けるような青空が、約束を守ったブーンに笑いかけている。


題:(´・ω・`と9m もっとお米を食べようよ m9っ`・ω・´) と母
終わり
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