892 844 New! 2006/06/19(月) 22:01:44.96 ID:VcRK8y6H0
それほど流行っているわけでもないが、廃れているわけでもない
裏街道のはずれ、そして更にその地下、そんな辺鄙な場所に、ショボンのバーボンハウスは存在した
だが、それでも店に客が一人もいないなどということはなく、売上も上々だった
それはひとえに、ショボンの人柄と、酒の美味さのおかげだった
どちらもショボンの努力の結晶だったが、優しすぎる程に温和な彼は、それを客に言われると、きまって謙遜した
皆、ショボンが好きだった
ショボン自身も、皆が好きだった
だからこそ皆、その瞬間には我が目を疑った
『ショボンのバーボンハウス』は、何の前触れもなく、その活気を失っていたのだ

( ^ω^)「そんな……なんでだお!? ショボン! ショボン! 何処に行ったんだお!」

以前は笑い声が絶えなかった店内も、今は月明かりが差すのみで、それが薄く積もった埃を青白く照らしていた
カウンターには無造作にグラスが置かれ、いくつかは横倒しに、そして床に落下して粉になっていた
潔癖ともいえるショボンの綺麗好きを考えると、この状態はありえない
この店の常連客の一人だったブーンは、一緒に連れてきていたドクとツン、そしてクーを振り返った

893 844 New! 2006/06/19(月) 22:03:19.18 ID:VcRK8y6H0
( ^ω^)「ありえない、こんな……! なんで!?」
ξ゚听)ξ「落ち着きなさいよ! たまたま遠出してるだけかもしれないじゃない!」
( ^ω^)「でも……!」

ツンに言われて、はじめてブーンはその可能性を検討した
しかしやはり、絶対に、その可能性などないのだ
彼が、ショボンが僕達に何も言わずにいなくなるなど、ありえるはずがない
根拠は信頼、それで十分
張り紙も置手紙もない、鍵すら閉めていない
落ち着けといったツンも、推理の帰結は同じ場所だったらしく、顔をしかめていた

川 ゚ -゚)「うむ……。やはり皆も結論は同じらしいな。現場の状況を考えると、これは確実に誘拐、もしくは殺害されたか……だな」
('A`)「冷静な現場分析どうも。……それよりどうするよ、この状況……」

ふぅ、と溜め息をつきながら、ドクは手探りでライトのスイッチを探し当て、点けた
そして明るくなった店内を見回して、息を呑んだ
血にまみれたショボンが、頭から酒をかぶって事切れていた
あてられたツンがよろめいてしまうのを、ブーンが慌てて支えた

895 844 New! 2006/06/19(月) 22:04:36.03 ID:VcRK8y6H0
川 ゚ -゚)「死因は大量出血だな。腸が引っ張り出されている……それに、舌が切り落とされている。凶器はこのナイフか……。儀式殺人の類か? だがそれにしては中途半端な点が……」
( ^ω^)「……もう、もうやめろ! もうたくさんだお!」
ξ゚听)ξ「ブーン……」

ブーンの目に薄っすらと滲んでいるものをみて、クーはすまないと言って目を伏せ、ショボンの死体から離れた
何故、何故ショボンがこんな目に遭わなければならない?
現状を受け入れたくないという逃避と、ショボンを死に至らしめた人間に対する憎悪がせめぎあって、ブーンの心は混乱しきっていた
だが時を待たずして、憎悪が競り勝った
ブーンは膝を折ると、床に手をしたたかに打ち付けた

( ^ω^)「くっそぉぉぉ!!」

怨嗟の声をあげる
ショボンがなにをした? 
彼は優しく誠実で、少し間の抜けた、皆に愛されるべき人間だった
それなのにこんな、こんなむごたらしい仕打ちを、何故!?

川 ゚ -゚)「おそらく犯人は同業者、もしくは快楽殺人者。死んでからまだそれほど時間は経っていない。まだ犯人は近くにいるかもしれない。……どうする」
( ^ω^)「……殺す。必ず見つけ出して」

殺してやる

897 844 New! 2006/06/19(月) 22:06:07.82 ID:VcRK8y6H0
(´・ω・`)「てな話を考えたんだけど、どうかな」

大事にされる僕、惜しまれる僕、悼まれる僕
ああ、エクスタッシぃぃーん

( ´_ゝ`)「うるせぇんだよボケー! 死ねー! うひゃっひゃっひゃっひゃ!」
(´<_` )「時に兄者、飲みすぎだ。これでは払う金がない。母者に殺される。それはもうむごたらしく。舌を引っこ抜かれるかもしれない」
( ;´_ゝ`)「おふっ! そ、それもそうですぅ。じゃあ、帰るですぅ」
(´<_` )「兄者、気持ち悪い。本当に気持ち悪いぞ、兄者。兄者、なんて気持ち悪いんだ」
( ;´_ゝ`)「三度も言わないでくれ。死にたくなる」

店中の酒を飲み干した彼等は、そのまま勘定も払わずに出て行ってしまった
まぁいいか、と溜め息をつく

(´・ω・`)「あーあ、脱サラしてバーボンハウスなんて、無謀だったか。無念だ、極端に、ホントに残念。とほほ」

ショボンは立ち上がると、クローズの板を店先に立てた
もっとも、もう一生この看板を店にしまうことはないだろうな
妻子を捨ててまで開いたこの店
未練がないといえば嘘になるが、仕方がないだろう、もうダメなのだ、ダメダメだ
DJにでも転職するかなと考え始めたころ、店のドアがノックされた

( ^ω^)「おーい! もう閉店なのかおー? ごめんお、ツン。また明日こようか?」


それから二年後、ショボンはそれはそれはむごたらしく殺されましたとさ


                    〜ドキッ!川 ゚ -゚)のバーロー大作戦〜
                               終わり
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