926 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:32:01.67 ID:fJQ+MnAY0
いつだっけな。

人が怖くなったのは。


いつだっけな。

僕が家から出れなくなったのは。


家族が怖くなったのは



いつだったっけな。






928 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:32:27.35 ID:fJQ+MnAY0

まだ風が爽やかな春。
ブーンは部屋で唸っていた。

暑い。 尋常でなく暑い。

冷房が故障しているからだ。

かといって窓を開ける勇気はあまりない。
だが、このままでは熱中症になりそうだ。

(;^ω^)「暑いお・・・ このままじゃ死ぬお・・・」

(;^ω^)「仕方ない・・・背に腹は変えられんお・・・」

勇気を振り絞り、窓を開ける。
当然誰も見ていないが、それを確認したブーンはほっとした。
爽やかな風が頬を撫でる。


ふと、おもむろに下を見る。
そこには、親子連れ。
母親に手を引かれた子供が、うれしそうについて行く。
その手には、ペロペロキャンディーが握られていた。

( ^ω^)「ペロキャン・・・懐かしいお。」

最も、今の自分には関係ないと思い込む。
しかし、否応無しに彼は懐かしさへと浸る。

929 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:32:53.58 ID:fJQ+MnAY0


幼いころに憧れた ペロペロキャンディー。
300円と、高くて変えなかったキャンディー。
けれど、親友達と一緒に買って、一緒に食べた。
とてもおいしかったのを覚えてる。

( ^ω^)「・・・食べたくなったお・・・」

けれども、一人で行くのは怖い。
それに、いい年こいた高校生がペロキャン買うと言うのもおかしな話だ。
だけどブーンは、欲しい気持ちが止まらなかった。
懐かしさに飢える というのも変な話だが、ペロキャンにはそんな魅力がある気がした。

( ^ω^)「・・・変装していくお」

黒いコート、サングラスに着替える。
この服装は暑いが、仕方が無い。
いったい何が今の自分にしたのだろうか。
着替えながら、ブーンはそんなこと考えていた。


930 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:33:33.06 ID:fJQ+MnAY0


自分がいる。
殴られているようだ。

入学して半月だろうか、急に3年の先輩に呼び出された。
口調が気に入らない と言う理由でボコられた。

あのときの血の味は、今でも忘れることはできない。


ブーンは、クラスではなかなか人気者だった。
おかしな口調、穏やかな人柄。
そして容姿もピザキモウザメンという訳でもなく、それなりに美形。
クラスの人たちは、庇ってくれた。

だけどブーンは逃げた。

クラスの人たちの嫌味が聞こえるようだった。
不登校になってから、それが怖くなった。


そして、今現在。


大分症状も回復してるな。 と、自分でも思う。
だけど、たまらなく怖くなるのだ。
笑われたらどうしよう と。

931 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:33:55.79 ID:fJQ+MnAY0


そんなことを考えているうちに、駄菓子屋に着いた。
ブーンは即効で入り、ペロキャンを手にとっておばちゃんに渡した。

「親戚の子にあげるのかい?」

(;^ω^)「そ、そうですお。」

ぎこちなくブーンは答えた。
おばちゃんは、リボンを柄にキュッっと巻いて渡してくれた。

値段は変わっていない、300円だ。
ブーンは300円を払うと、足早に立ち去った。


933 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:34:15.03 ID:fJQ+MnAY0
家に着くなり、ブーンは即効で自室に戻る。
心臓が飛び出すほど緊張した。
鼓動が五月蝿い。

(;^ω^)「ぶひー・・・ ぶひー・・・ 怖かったお・・・」

太ってるわけでもないのに鼓動が荒い。
だけど、外に出れただけマシかもしれない。



額の汗を拭き、着替えて椅子に座り袋からペロキャンを出す。
ペロキャンの包装を丁寧に剥がし、手に持つ。

(;^ω^)「さて、食べてみるお。」


最初の一口で、ブーンの期待は大層裏切られた。


不味い。


人口甘味料が大量に使われた、不自然な甘さ。
そしてなぜか、少し薬臭い。


おかしい 
思い出では、あんなにおいしかったのに。

935 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:34:49.44 ID:fJQ+MnAY0


皆で買った、ペロペロキャンディー。
日暮れの公園に集う4人の子供。


昔憧れた、銀玉鉄砲、メンコに輪ゴム銃 そしてペロペロキャンディー。

思い出は、美しかった。


( ;ω;)「なんでだお! あんなにおいしかったはずだお!」

涙が滲んだ目で再び自分に問いかける。

( ;ω;)「なんでだお! おっおっ・・・」

自然と嗚咽が漏れてくる。

936 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:35:07.44 ID:fJQ+MnAY0


憧れたペロペロキャンディー。
だけど、憧れのように美味しくは無かった。


全部、過ぎ去ってしまった。

僕は、心だけでも戻りたくて買った。

でもそれは昔になんて戻しちゃくれなかった。

だったら僕は今を歩こう。

かけがえの無い友達は、まだ居る。

勇気を出して、僕は歩こう。



自分に決着をつけるために。






937 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:35:33.07 ID:fJQ+MnAY0
翌日、ブーンは黒色の学生服に袖を通し、家を出た。
早朝で、どこにも人は居ない。

2年の初めに届けてくれた、クラス表を引っ張り出して見た。
ツン、ドクオ、ショボン 全員一緒だ。

ブーンは少し嬉しそうに、学校へと向かった。








朝の教室は静かだ。
そこへ、一人の男がドアを開けた。


('A`)「・・・! ブーン!」



938 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:36:14.86 ID:fJQ+MnAY0
朝早く、ドクオは教室へと着いた。
後ろには友達が居る。



そして教室にも、友達は居た。

来ないと思っていた友人。
来れないと思っていた友人。

だけどそれは、至極当たり前のように教室に居た。
正にビックリドッキリサプライズ。

(;^ω^)「・・・久しぶりだお。」

緊張気味に、ブーンは言った。
立ち尽くしているドクオの後に続いて、他の友人も入ってきた。

(´・ω・`)「ブーン!」

ξ゚听)ξ「え・・・ ブーン!?」

友人が駆け寄ってくる。
責める様子も無く。
次第に、ブーンには涙が滲んできた。

( ;ω;)「久しぶりだお・・・ ごめんお、皆・・・」

嗚咽と共に、ブーンは言葉を吐き出した。
その後、皆、嬉し泣きに泣いた。

940 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:36:33.16 ID:fJQ+MnAY0




何事も無く、ブーンはクラスへと受け入れられた。
そもそも人気者だったし、虐められる筈も無い。
まして、自分は被害者なのだ。
皆、久しぶり と明るく言った。


ブーンは何故もっと早く来なかったんだろうと少し後悔した。

授業はさっぱりだったが、今はそんなことはどうでも良い。




941 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:36:53.44 ID:fJQ+MnAY0
昼休みに、屋上で人影が4つ佇んでいる。
4人はどうやら食事をしているようだ。

( ^ω^)「ドクオ、そのパン寄越せお。 弁当持ってきてないんだお。」

('A`)「俺は量持って来てないんだ。 頼むから食うな。」

( ^ω^)「いやだお。」

ドクオの手からパンをぶん取り、ブーンは駆け出した。

('A`)「あ、きったねーぞテメェ!」

(´・ω・`)「まぁ少し落ち着きなよドクオ。」

('A`)「俺の飯取られて落ち着けるかー!!」

ξ゚听)ξ「男でしょ! 飯の一つや二つ抜いたって死にゃしないわよ!」

('A`)「はいはい、どうせツンはブーンの味方だろ。」

ξ////)ξ「っ・・・そんなわけないじゃない!」

顔を赤らめて言うツン。
明らかに嘘が見えていた。

942 ぺろきゃんぺろぺろ New! 2006/06/19(月) 22:37:16.76 ID:fJQ+MnAY0

(´・ω・`)「青春だねぇ・・・ どうだいドクオ。 僕とレッツくそみs」

('A`)「だが断る」

その言葉と共にショボンが言い切るがより早く、ドクオのアッパーがショボンに決まった。
少しショボンは仰け反ったが、大してダメージは受けてないようだ。

( ^ω^)「乱暴は良くないお。 ドクオ。」

(´・ω・`)「痛いなぁ。  お詫びにドクオ後でトイレ来てね。」

('A`)「誰が行くかああああ!!!」






柔らかな春の風が、音を立てて彼らの頬を撫でた。

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