544 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 00:49:23.88 ID:a0Qaub6H0
何か許しが出たので投下してく。

ブーン達がバラデュークから脱出するようです
第3話

ブーン達は呆然としていた。
あるはずのもの、あるべきものがそこに無い。
あるはずの気密室が存在せず、目の前に広がっていたのは闇色の空間だった。

「…」

スーツが明度の自動補正を勝手に始めて闇色が薄れていく。
遥か向こうに岩壁が見えた。下を見れば地面もある。上を見上げればかなり高い場所に天井がある。

(´・ω・`)「…こうしていても始まらない。出よう」

そう言ってショボンが前に出る。扉をくぐって地面に足をつける。
ぎくしゃくとしながら他のメンバーもそれに続いた。

545 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 00:51:45.10 ID:a0Qaub6H0
最初にそれを見つけたのはしぃだった。

(*゚ー゚)「ひっ…!」
( ゚∀゚)「何だ?どうした?」
(;*゚ー゚)「あ、あれは?」

それを見た全員が息を飲んだ。
そこにあったのは巨大な青色の肉塊だった。

(´・ω・`)「…どうやらさっきのテレポートの話、ビンゴだったようだね」
(;'A`)「おい、あれは一体…」
(´・ω・`)「あれはグレートオクティのブルーウォーム。オクティ族の中でもひときわ強い力を持つ上位の眷属だよ」
(;゚∀゚)「死んでるのか…?」
川 ゚ -゚)「生命反応は無いようだ。転移させた時にエネルギーを使い果たして力尽きたのかもしれない」
(´・ω・`)「訓練室周辺だけってのは考えにくいから、もしかしたらベース全体を幾つか大まかに『切って』それぞれを適当に転移させたのかもしれない」
('A`)「何のためにだ?」
(´・ω・`)「分からない。もし狙ってやったのなら大したタマだよ。お陰で僕達は物資の補充もままならず、人員の半数以上を一瞬で失って窮地に立たされている」
(;^ω^)「それにしてもでかいお…あんなのに襲われたらひとたまりもないお」
(´・ω・`)「エネルギーを使い果たしていてくれて幸運だった。今の僕達の戦力じゃあれと戦うのは絶対に無理だ」
( ゚∀゚)「確かにな…」
ξ゚听)ξ「でもオクティの上位眷属がここにいるって事は…」
川 ゚ -゚)「…もう間違いないだろう。ここはオクティ族の巣窟であり本拠地、地下要塞バラデュークだ」

過酷な事実を突き付けられ、目の前が真っ暗になりそうになる。
だけど、生きて地上に戻るためにもここで立ち止まる訳にはいかなかった。

('A`)「早くここから脱出しようぜ…」
(´・ω・`)「ああ、階層を移動するためのゲートが各階層毎に設置されているはず。まずはそれを手分けして探そう」
( ゚∀゚)「ブーンはドクオと一緒に行動しろ、ショボンは俺に付いてきてくれ、ツンはクーとしぃさんを頼む」
「「了解」」

547 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 00:53:04.59 ID:a0Qaub6H0
闇の中でスラスターの光が瞬く。
重力は地球などよりはよほど低いが全く重力がない訳ではなく、スラスターの力を借りなければ天井までは上がれない。
今、ブーンは地球の重力下なら墜落すると即死間違い無しの高さまで上ってきていた。

( ^ω^)「しかしホントに広い空間だお」
('A`)「あのデカブツの棲み処だからな、それにふさわしい広さがないとダメなんだろう」
( ^ω^)「それにしても何であのオクティは自分の命を賭してまで、基地を転移させたんだお?」
('A`)「?ショボンの言ってた通りじゃないのか。俺達に打撃を与えるために…」
( ^ω^)「いや、僕がいいたいのは何で命を賭けてまでそれをやったのか?って事だお」
('A`)「…さぁな。異星人の考えることは俺には分からんよ」

それきり会話が途切れ、二人は黙々と探索を続ける。
しばらくしてからツンからの通信が入ってきた。

ξ゚听)ξ「座標を送るからこっちに来て。それらしいやつを見つけたわ」

549 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 00:55:22.76 ID:a0Qaub6H0
(´・ω・`)「うん、間違いないだろうね」

ショボンがしばらくゲートらしきものを調査して、そう結論づけた。
ゲートがあったのは天井の方だった。
スラスターを吹かし続ける訳にもいかないので、天井にワイヤーピックを打ち込んで全員がみの虫のようにぶら下がっている。

(´・ω・`)「オクティ言語で18→17って書いてある。ここが上のフロアへ移動するための道だ」
川 ゚ -゚)「開けられそうか?」
(´・ω・`)「ロックがかかってるね…ジョルジュ。ちょっと開錠するの手伝ってくれる?」
( ゚∀゚)「おうさ」
(*゚ー゚)「あ、私も手伝います」
( ゚∀゚)「しぃさんも?」
(*゚ー゚)「ええ、機械学は唯一の得意学科ですから」
( ゚∀゚)「じゃあお願いしたいかな…ブーン、波動銃持ってろ」
( ^ω^)「了解だお」

550 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 00:57:17.95 ID:a0Qaub6H0
ドクオはふと違和感を感じた。視界の中で何かが動いたような・・・?
確証は無かった。だからまだ仲間には伝えなかった。

('A`)「…」

代わりに波動銃のセフティを解除し、モードをチャージからリリースへ。
そこまで手順を踏んだその時だった。

('A`)「!!」

目には見えないがスーツが衝撃波を感知、スーツは感知した衝撃波に視覚補正を一瞬で施してドクオに具体的な攻撃の形を見せる。
咄嗟にドクオはシールドを全出力で展開した。バッテリーの残電力の半分が一瞬で吹っ飛ぶ。
シールドによる見えない壁に弾かれた衝撃波は拡散、少し離れた位置で警戒していたブーンとツンが余波を食らってよろめいた。

(;'A`)「ブーン!ツン!近距離砲戦用意!ショボン!ジョルジュ!しぃさん!開錠を急いでくれ!!」

答えるのももどかしい。
ブーンとツンは1秒で銃のセフティを解除。2秒目で天井に打ち込んだワイヤーピックを外し、自由に行動できるようにする。
開錠に取り掛かっていた三人はこれ以降のゲートにも通用する鍵を作るために取っていた開錠までの過程のバックアップデータの取得を放棄し、その分空いた回線を全て開錠ツールに突っ込んだ。
それでも速度は大して速くならない。ゲートを開くにはまだ時間が掛かる。
逃げ切るのは不可能だった。

551 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:03:10.97 ID:a0Qaub6H0
>>546
あー、次回からは別スレ立ててそこで1話からまとめて投下するわ。
すまんね。ちょっと独立させるの色々な意味で怖くて。

552 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:05:00.87 ID:a0Qaub6H0
川 ゚ -゚)「ツン!下にブラヌラだ!」
ξ゚听)ξ「…!」

ツンはクーの声に反応してスラスターを吹かして方向転換、近寄ってきていたタコのような姿形をしたオクティの幼生を撃ち抜く。

川 ゚ -゚)「ドクオ!」
('A`)「言われなくても!」

ドクオもにじり寄ってきていたブラヌラを潰す。

川 ゚ -゚)「ブーン!」
( ^ω^)「大丈夫だお!」

彼らは今、オクティ族の幼生とドッグファイトを繰り広げていた。
スラスターで加速し、と思えば逆噴射で急停止して、時には天井を蹴り、時には敵の死体をも足場にして戦う。
空間を縦横無尽に往復し、次々と敵を屠っていくその姿はまさに空間騎兵の名に相応しかった。
しかしその活躍を嘲笑うかのように幼生は次々と沸いてくる。
ブーン達のキルカウントは着実に増えているのに、状況は一向に改善されない。
戦況は芳しいものではなかった。
こちらの物資には制限があり、先の事を見据えるならばあまり消耗するわけにいかない。
そもそもドクオの喰らった初撃にしても手痛い損失なのだ。
電気が途切れればスーツはただ重いだけの着ぐるみにしかならないのだから。

554 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:06:41.12 ID:a0Qaub6H0
川 ゚ -゚)「…」

クーはブーン達の戦闘補佐を行いながらこいつらの母体を探していた。
ブラヌラ、スキフラ等のオクティ族の幼生は成長したオクティから生み出される。
生み出される速度は相当速い。このままでは物量差でその内押し潰される。
早急に発生源を断つ必要があった。

川;゚ -゚)「…」

見つからない。焦る。
このままでは・・・!

ξ゚听)ξ「クー!」
川 ゚ -゚)「!?」
ξ゚听)ξ「私達は大丈夫!だから母体の索敵を優先させて!」
川;゚ -゚)「しかし…」
ξ゚听)ξ「私達の腕がそんなに信じられない?」
川 ゚ -゚)「…分かった」

本当は大丈夫ではないだろう。
特にブーンはこの重力間での動きにまだ慣れていない。傍目から見ていても時々危なっかしい動きをしている。
だけど・・・今は仲間を信じよう。
まずは深呼吸して頭と心を落ち着かせる。
全てを見通すスーツの目を使い、クーは闇を睨みつけた。

555 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:09:31.66 ID:a0Qaub6H0
川 ゚ -゚)「ブーン!」
( ^ω^)「なんだお?」
川 ゚ -゚)「あれだ!あいつを狙え!」

クーから送られてきた索敵結果のデータを網膜内で展開された。
そこに表示されていたのはグレートオクティだった。
さっきの大雑把なスキャンでは、あまりにも微弱すぎる生命反応が引っ掛からなかったのだ。
今、グレートオクティは最後の力を振り絞って幼生を生み出している。

('A`)「ブーン!構わねぇから残ったエネルギー全出力を使って叩き込め!チャージ中の露払いは俺とツンがやる!」
( ^ω^)「分かったお!」

556 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:13:43.43 ID:a0Qaub6H0
波動銃の威力調整をフルに設定する。トリガーを引く、弾は出ない。
通常ならトリガーを引いたら弾が出るのだが、威力調整が最大に設定された時のみ仕様が変更される。
トリガーを引き続けてマガジンに残ったエネルギーを搾り出し、それをバレルに乗せるのだ。
破壊の力が溜まっていくのが感じられる。
グレートオクティにとどめを刺すためのエネルギーの牙が研がれていく。
まだだ、まだもう少し。
ツンがスキフラの放った衝撃波をかわしきれずにぶち当たる。
シールドが自動展開され衝撃を殺す。だが相殺位置が近すぎた。殺しきれなかった衝撃で体勢が崩れる。
ツンは必死にスラスターを使ってリバーサルマニューバーを行い体勢を立て直そうとする。ドクオが牽制射撃を放ちながらツンのカバーに回る。
そこでドクオは自分の失策に気が付いた。
ブーンとオクティとの間を遮る壁が無くなった。
オクティの幼生達がブーンに殺到し始める。クーが声にならない悲鳴を上げる。

『エネルギー充填完了』

その文字が網膜内に表示されたのは、その直後の事だった。
トリガーを放す。
グレートオクティの弱点である目に向かって圧倒的な力が放たれる。
幼生達の不幸は考え無しにブーンとグレートオクティとの直線上を辿って襲い掛かろうとしていた事だろう。
こいつらがブーンの背後を取るように動いていたならば、もしかしたらブーンだけでも道連れにできたかもしれない。
放たれたエネルギー塊に触れた幼生は跡形もなく消し飛んだ。
そしてブルーウォームに着弾する瞬間、ブーンの目と弱々しい光を灯した巨大な目が合ったような気がした。
その目にあったのは、生への執着や死への恐怖ではなく、何かをやり遂げた満足気とも言えるものだった。
何で・・・何で死にゆくのにそんな目ができるんだお?
命を賭けてテレポートを敢行したのも、死んだフリをしてやり過ごさなかったことも。
分からなかった。

557 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:17:41.11 ID:a0Qaub6H0
残った幼生を一匹残らず片付けて再び銃を携えて警戒態勢に入る。
ブーンの銃はエネルギーが尽きているので、時間経過で回復するまでは使い物にならないのだけど、あんな事があった後に銃を手放す気分にどうしてもなれなかった。
幸運な事にゲートが開かれるまでの間、妨害は無かった。

(*゚ー゚)「やっと開きましたね…」
('A`)「随分時間がかかったなオイ」
(´・ω・`)「うん、でも1から処理をやり直して鍵は作れたからね。皆に配っておくよ」

そう言ってショボンは全員にプログラムを配信した。

( ゚∀゚)「使い方は簡単。ゲートに設置されてるソケットにケーブルを差し込んでこれを流し込むだけ、これで誰でも開錠役を担当できる」
(*゚ー゚)「もちろんマニュアルでアシストしてやれば開錠までの時間は短縮できます。アシストの手順も同封しておきましたから確認しておいて下さい」
(;^ω^)「…ちょっと僕には難しすぎるお」
(´・ω・`)「そうだね、前提条件として少し高度な知識が必要だからね」
( ^ω^)「ショボンとジョルジュとしぃさんに任せておけば大丈夫お?」
(´・ω・`)「…まぁそうなんだけどね。ブーン。君に一つ言っておかないといけない事がある」
( ^ω^)「何だお?」
(´・ω・`)「甘えるのもいい加減にしろよ?」
(;^ω^)「!?」
(´・ω・`)「昔教官に言われた事あったよね?あまりにも楽天的すぎるって」
(;^ω^)「…」
(´・ω・`)「あのね、高速化を担当できる僕がもし死んだらどうなる?」
(;^ω^)「…そ、そんな事」
(´・ω・`)「ありえないとは言い切れないよ?もちろん僕だって簡単に死ぬつもりは無い。それはジョルジュやしぃさんも同じだろう」
( ^ω^)「…」
(´・ω・`)「だけどね、万が一は有り得るんだ。その事は頭に入れておいて欲しいな」
ξ゚听)ξ「ショボン!言いすぎよ!?」
( ^ω^)「…いや、ショボンが正しいお。正直楽観視しすぎてたお」
(´・ω・`)「分かってくれたらそれでいい」

559 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:21:19.92 ID:a0Qaub6H0
(*゚ー゚)「ブーンさん」
( ^ω^)「しぃさん?」

プライベートな回線を通じてしぃが通信してきた。
だからこの会話は他の人間には聞こえない。

(*゚ー゚)「あの、ショボンさんの事嫌わないであげて下さいね?…開錠プログラムを誰でも扱えるようにしたのも…」
( ^ω^)「多分そうだと思ったお」
(*゚ー゚)「…」
( ^ω^)「誰かがいなくなっても、何が起こっても誰かが生き延びれるようにする。あいつはそういう奴だお」
(*゚ー゚)「じゃあ…」
( ´ω`)「だけど死ぬかもしれないって話になった時、ショボンは自分自身を真っ先に挙げたお…」
(*゚ー゚)「…」
( ´ω`)「ちょっと心配だお」

その頃、クーもプライベートな回線を通じてショボンと話をしていた。

川 ゚ -゚)「ショボン」
(´・ω・`)「なんだい?」
川 ゚ -゚)「お前まさか真っ先に死ぬつもりじゃないだろうな?」
(´・ω・`)「まさか、軍の購買部を全部バーボンハウスにするまでは死ぬつもりはないよ」
川 ゚ -゚)「だといいんだが」
(´・ω・`)「…」
川 ゚ -゚)「お前が死んだら私が悲しむ」
(´・ω・`)「え?」
川 ゚ -゚)「私だけじゃない。ブーンも、ツンも、ドクオも、ジョルジュも、しぃさんも皆悲しむだろう」
(´・ω・`)「…」
川 ゚ -゚)「お前は普段冷静な癖に、思い込んだら命懸けな所があるからな」
(´・ω・`)「…心配しなくても大丈夫だよ」
川 ゚ -゚)「頼むから勝手な事は考えるな?私達は仲間で、それ以上に親友なのだから」

562 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/17(土) 01:25:26.84 ID:a0Qaub6H0
'A`)「準備は?」
( ^ω^)「大丈夫だお」
( ゚∀゚)「いけるぜ」
(´・ω・`)「できてるよ」
ξ゚听)ξ「問題ないわ」
川 ゚ -゚)「問題なし」
(*゚ー゚)「いけます」
('A`)「よし、行くぞ」

そう言ってドクオはゲートに飛び込んだ。
他のメンバーもそれに続く。
生きてこの地下要塞から脱出するために。



今日はここまで。

>>553
地球人ととっても仲が悪い異星人です。

>>558
マジか。全然知らなかった。
公式のトビ・マスヨのイラスト見たら波動銃抱えてるのに。

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